"身重の私を捨てた夫の誤算" 第14話
「分かった。ただし、私が必ず同席する。しでも体調に異変があれば、即座に打ち切る。それでいいね?」
「はい。ありがとうございます」
分。 私は病院の階、厳なセキュリティで界と遮断された特別面談のソファに腰掛けていた。 内にはのSPが壁際にち、神崎が私のすぐ隣に控えている。
い扉がき、警備員に案内されての女が入ってきた。
野吉だった。 しかし、その姿は昨の裁判所で見せた、傲で尊なセレブ気取りの義母とはまるで別のようだった。
トレードマークだった派な毛皮のコートはしわが寄り、入れのき届いていたはずの髪は乱れ、顔は気に沈んでいる。 両には、級百貨の包装で包まれた桐の箱――おそらく価なツバメの巣か何かの滋養壮品を、すがりつくように抱え込んでいた。
吉はおずおずと部に入ってくると、壁際につ屈なSPたちの徹なに竦みがり、さく鳴のような息を漏らした。 そして、ソファに座る私を見るなり、すりで寄ってきた。
「み……宮子さん……」
そのからた呼び名に、私の背筋にたいものがった。
宮子さん。 、度も呼ばれたことのなかった名。 あので、私は常に「おい」か「あんた」、あるいは親戚ので「うちの居候」と呼ばれていた。
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その女が今、擦り寄るような、媚びを含んだ笑みを浮かべて私の名を呼んでいた。
吉は桐の箱をテーブルのに滑り込ませるように置くと、両を胸のでわせた。
「ああ、よかった……無事だったんだね。体調はどうだい? お腹の子は順調かい? これね、本の老舗で買ってきた最級の漢方なんだよ。妊婦の体に番いいって聞いてね、宮子さんにんでもらおうとって……」
「何の用ですか、野さん」
私の氷のように乾いた声が、吉の言葉を遮った。
吉の顔に張り付いていた引き攣った笑みが、ピシリと凍りつく。
「野さんだなんて、そんな儀な……。昨まではお義母さんと呼んでくれていたじゃないか」
「私たちは昨、裁判所で正式に婚しました。法に、私はあなたと何の関係もない赤のです。にお願いします。医師から静を命じられていますので」
吉は線を泳がせ、隣に座る神崎のややかな線と、部の隅のSPたちを交互に見つめた。 やがて、彼女はハンカチを取りし、目元を押さえる芝居を始めた。
「……悪かったよ。昨は、私も気が転していたんだ。ほら、があんな若い娘に現を抜かして、婚だなんて言いすから……私だって混乱していたんだよ。ペンダントのことも、本当に申し訳なかったとってる。弁償ならするよ。
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いくらでも、しいのを買ってあげるからさ」
「あれは、くなった私の両親の形見です。おで買えるようなものではありません」
「そ、そうだけどさ……」
吉の声から、わずかに焦燥が漏れ始めた。 彼女はテーブル越しにを乗りし、私のを取ろうとして、神崎に鋭く制止された。 吉は忌々しそうにを引っ込めると、本題を切りした。
「宮子さん、頼むよ。を助けてやっておくれ」
やはり、それだった。
「今、会社が変なことになってるんだよ。国の偉いたちから契約を切るだの、何億の損害賠償を払えだのって脅されて……、昨夜からもできずにでを抱えて震えてるんだ。あの子、胃を痛めて吐いてばかりで……見ていられないよ」
吉の目から、今度は本物の涙がポロポロと零れ落ちた。 自分のする息子が破滅の危に瀕していることへの、純粋な恐怖の涙だった。
「宮子さん、あんたがちょっと利きをしてくれれば済む話なんだろう? さっきの副臣さんだって、あんたの言うことなら何でも聞くじゃないか。パッチの直し方だって、あんたが裏でに教えてあげれば、の説会だって丸く収まるんだよ」
「なぜ、私がそんなことをしなければならないのですか」
私の静かな問いに、吉は信じられないといった表で目を見いた。
「なぜって……は、あんたのお腹にいる子の、父親なんだよ!?」
吉は声を荒らげ、正当性を主張するように振り振りを交えた。