"身重の私を捨てた夫の誤算" 第12話
親父にも殺される! おだって、まれてくる子どもに、父親が詐欺師として逮捕されたなんてられたくないだろ!? 子どものためをうなら、今回だけは――』
「子どものため?」
私は言葉を遮った。 その声のさに、自分自でも驚くほどだった。
「あなた、裁判所ので何と言ったか覚えている? 『お腹ばかりきくてカエルみたいだ』と笑った玲奈の横で、私に向けて煙のを投げ捨てたわね。吉さんが私の両親の形見を踏み潰した、あなたは『どうせ偽物だ』と煽っていた」
『そ、それは……あのを丸く収めるための冗談で――』
「冗談での尊厳を踏みにじるを、私は子どもの父親として認めるつもりはありません」
『宮子! お、本当に俺を破滅させる気か!? そこまでして俺を毀損して、何が残るんだよ! おはただの、復讐に狂った女だ!』
「破滅?」
私は静かに、けれど確に告げた。
「私はあなたを破滅させようとなんてしていません。ただ、私の名を私に返してと言っているだけです」
『……は?』
「奪われたものを元の所に戻す。ただそれだけのことが、なぜあなたを破滅させることになるの?」
受話器の向こうで、が絶句したのが分かった。 答えられるはずがなかった。 私の名を返すということは、彼が「才技術者」ではなく、ただの無能な剽窃者であったことを認めることと同義なのだから。
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「の説会、私もきます」
『なっ……!?』
「同査問委員会の特別技術鑑定として、正式に請を受けました。壇で会いましょう、野部」
『待て! 宮子、待ってくれ! 頼む、宮子ォッ――!』
私は通話終ボタンをく押し、端末の源を完全に切った。 部のに、再び静寂が戻ってきた。
腹部の痛みが、先ほどよりもしだけ鋭く、く、私の体を貫いた。 私は両でお腹を抱え、荒い息を吐きながらベッドの背もたれに体を預けた。
お腹のの命が、激しく蹴りげてくる。
(痛いよね。ごめんね……でも、ママはもう逃げないよ)
失われたのみ。 奪われていた私の名。 そして、これからこの子が背負わされるはずだった、欺瞞に満ちた血縁の鎖。
そのすべてを断ち切るための台が、あとに迫っていた。 窓のには、の夕暮れが迫り、京のがたいにみ込まれようとしていた。
同事故説会まで、あと。
計の秒針が刻む無質な音が、張り詰めた技術顧問の空気を細かく刻んでいた。 窓のには、の鈍のがり始めている。 く霞む霞が関の官庁を眺めながら、私は元の作業用端末に最のキーストロークを打ち込んだ。
カチリ、と静かな音が響き、画面の央に青い捗バーがり抜ける。
『システム障害根本原因技術鑑定――作成完』
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にわたるログ解析と、から蓄積されていた社内リポジトリの照が、すべて完した瞬だった。 画面には、今回の全国なシステムダウンを引き起こした、紛れもない「真実の連鎖」が克に記録されていた。
障害の直接原因は、野が独断で実環境に流し込んだアップデートパッチ。 だが、その本質はもっと卑で、恐ろしいものだった。
は、回の定例査問で官公庁側から指摘された「レスポンスの遅延」を、自力で解決することができなかった。 期が迫る、彼が取ったは、かつて自宅のローカル環境にあった私の廃棄フォルダから、の未完成スクリプトを引っ張りし、パラメータの性すら確認せずに本番モジュールへ引に継ぎ接ぎすることだったのだ。
自分が理解すらしていないのコードを、理解しているふりをして国インフラの枢に流し込んだ。 それが、今回の事故のすべてだった。
「……終わったかい、宮子さん」
背から、神崎補佐官の静かな声がした。 振り返ると、彼は何枚もの類が挟まれた分い革のファイルを抱えてっていた。
「ええ。事故の直接原因、および障害を発させたパッチのコード自に関する鑑定結果です」
私は端末のディスプレイを神崎に向けた。
「このパッチに含まれる関数群は、私がに破棄した実験用コードと完全致します。
そして、それを実環境に適させるための例処理フラグを無理やりき換え、署名欄を『野』に偽装した痕跡も、ローカルコミットログから完全に復元できました」