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"身重の私を捨てた夫の誤算" 第10話

特許庁に提された願類の写しがアーカイブに残されていたが、そこには「発者:野」とだけ記載され、私の名は共同発者の欄にすらしなかった。

の、吉が脳梗塞で倒れ、病院と自宅を往復しながら、病の片隅でノートPCをいてきげた規模分散ストレージのアーキテクチャ。 そのホワイトペーパーの謝辞にかれていた「協力:堂」という文字は、社内ポータルにアップロードされる直、のによって物理に削除されていた。

「……全部だわ」

指先が震え、キーボードので止まった。

「最初から……最初から、このは私を妻として見てなんかいなかった」

あの男が私に見せていた笑顔。 『宮子、おは本当に才だよ』 『俺がで稼いで、おを守るから。おはで、俺のためだけにコードをいてくれればいい』 『夫婦なんだから、名なんてどっちでもいいだろ?』

甘い言葉の裏で、がやっていたのは、私のの切り売りだった。 私の脳を搾取し、自分の名義にすり替え、それを担保にして会社の役にり詰め、座でみ歩き、を作り、豪邸を建てていたのだ。

そして、その、私は何と言われていたか。 『親のいない孤児を拾ってやった』 『円も稼げない穀潰し』 『息子の稼ぎで贅沢に暮らしている寄虫』

吉が私に向けていた罵詈雑言の数々。

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それを、は度たりとも止めようとはしなかった。 当然だ。 私が無力で、無価値で、社会に孤したでいてくれなければ、この巨な嘘が維持できなかったからだ。 私が自分のでち、自分の名を取り戻してしまえば、彼の砂の楼閣は瞬で崩れるのだから。

ズキリ、と腹部にい痛みがり、私はわず息を呑んで机に突っ伏した。

「宮子さん!」

神崎が駆け寄り、背にを添えてくれる。

「丈夫か!? おい、ドクターを――」

「待ってください……まだ、丈夫です」

私は荒い呼吸をえながら、顔をげた。 脂汗が目に入り、界が滲む。 けれど、私の瞳の奥には、これまできてきたで最もたく、澄み切ったりの炎が灯っていた。

「神崎さん。……これを見てください」

私は震える指で、画面の箇所を指差した。 野システムズの社内ネットワークで、リアルタイムのきがあった。

のアカウントが、私のプライベートな旧発環境――かつて自宅の斎からリモート接続していた、私専用の検証用サンドボックスにアクセスを試みていたのだ。

「奴は何をしているんだ?」神崎が画面を覗き込む。

「……棒の続きですよ」

私は徹に言い放った。

「社内のエンジニアに突きげられ、自力では修復できないと悟ったは、私が過に残した検証用のバックアップスクリプトを漁っています。

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、私が緊急のロールバック用に組んでおいた、未公の復旧スクリプトがあるんです。それを見つけして、自分の柄として実し、このを切り抜けようとしている」

画面では、のカーソルが、私の残したアーカイブフォルダへとづいていた。 会議のスピーカーから、の興奮したような独り言が微かに聞こえてくる。

『あった……これだ! これを使えば……!』

がそのファイルを本番適応ディレクトリへとコピーしようとした、まさにその瞬だった。

私は、管理者用のコンソール画面をき、迷うことなくコマンドを打ち込んだ。

『sudo chmod 000 /archive/miyako_sandbox/*』 『revoke access_token --user=koichi_amano』

権限の完全剥奪。 さらに、内閣府のセキュリティ特権を用いて、野システムズの全端末に対し、そのスクリプトへのアクセス遮断プロトコルを即発させた。

次の瞬、監カメラの映像ので、劇な変化が起きた。

野システムズの会議。 プロジェクターの画面に映しされていたのPC画面が、突如として鮮血のような真っ赤な警告に染まったのだ。

『CRITICAL ERROR: ACCESS DENIED』 『権限がありません。このリソースは現、国サイバー監査委員会により凍結されています』 『所者認証に失敗しました。作成者:Miyako Tendo(堂宮子)』

巨なスクリーンに、太字でデカデカと表示された『堂宮子』の名。

会議にいた全員が息を呑んだ。

佐々をはじめとするエンジニアたちが、目を見いてスクリーンを見つめる。

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