"長女にだけ渡された鍵" 第13話
父が歳、私が歳、健が歳、織が歳のの記録。
ページをめくると、父の若い頃の、まだ震えていない力い跡が目にび込んできた。
『平成。 妻がんだ。 今から、俺がでこのを育てなければならない。 役所の同僚たちは同の目を向けてくる。だが、裏で何を言っているか分かったものじゃない。「男親で、どうせ子どもをグレさせる」「のはゴミ敷になるに決まっている」。 絶対に、世に舐められてたまるか。 派な庭に見せかけなければならない』
最初の文から、滲みるような自識と世体への異常な執着が綴られていた。 そして、その数ページ。 私の指が、たく凍りついた。
『平成。 限界だ。飯の炊き方も、洗濯の回し方も分からん。 ばかりではが持たんし、所の目が痛い。 だが、政婦を雇うはない。再婚などすれば、親戚から「妻に財産を吸い取られる」とを叩かれる。 使える駒は、のにしかいない。
女・朋美。歳。 この子は気がさく、母親に似て責任がい。 今、台所で皿を割った、ひどく怯えていた。 試しに「おがこのの母親代わりだ。朋美がしっかりしてくれないと、お父さんも弟たちもきていけない」と言い聞かせ、を撫でてやった。
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泣きながら「私、頑張る」と言った。 チョロいものだ。 この子には「しっかり者」という首輪を嵌めておけばいい。 褒めて、責任を背負わせ、自尊を満たしてやれば、文句も言わずに事をする。 をても、くの学へはやらない。 元に置いて、の留守番をさせる』
血の気が、音をてて引いていくのが分かった。
チョロいものだ。 首輪を嵌めておけばいい。
文字が、私の網膜に焼き付いてれない。
『平成。 次男・健。歳。 負けず嫌いで、同級とすぐに喧嘩をする。 このいは、劣等を刺激して煽るのが番効く。 「おは男兄弟ので番優秀だ。将来はこのを背負ってつ柱になるんだ」と吹き込み続ければ、勝に勉し、勝に成果をげる。 男としての責任は朋美に押し付け、健には「で勝つ男」の板を背負わせる。 俺が成し遂げられなかった世と名誉を、あいつに稼がせる』
『平成。 女・織。歳。 甘ったれで、夜に母親を探して泣く。鬱陶しくてたまらん。 だが、この子を野放しにすれば、将来勝にをてくだろう。 朋美が事をし、健がを稼ぐなら、俺の老のの世話をするが必だ。 「織、おだけが俺に番似ている。おだけは俺を裏切らないよな」と抱きしめてやったら、ピタリと泣き止んだ。
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罪悪を植え付けろ。 「お父さんを見捨てるのは、自分自を捨てるのと同じだ」とわせろ。 そうすれば、この子は、俺の傍かられられない』
帳が、私のから滑り落ちた。 埃まみれの板に、パサリと乾いた音をてて落ちる。
暗い根裏部で、私は息の仕方を忘れていた。
。 私の、健の、織の、のすべて。
私たちが「族の絆」だと信じ、互いに嫉妬し、奪いい、誇りにしてきた言葉のすべてが―― の歳の男が、自分の孤独と世体を守るためにき殴った、ただの飼育マニュアルだったのだ。
私は、されていたから「しっかり者」になったのではない。 番扱いやすく、番搾取しやすいから、母親代わりの無料の政婦として仕てげられただけだ。
健は、期待されていたから「優秀」を目指したのではない。 父親の劣等を埋めるための、歩くトロフィーとして煽りてられただけだ。
織は、似ていたからがられたのではない。 老のの世話をさせるための、逃げのない守兼囚として、罪悪の鎖で繋がれただけだ。
「……あ」
声にならない鳴が、喉の奥から漏れた。
歳の、プロポーズしてくれたあのの顔が浮かんだ。 『京で緒に暮らそう。君はもう、実の面倒を分見たよ』と言ってくれた彼のを、私は泣きながら振り払ったのだ。
『父さんが、私がいないとダメなの。私は女だから、を守らなきゃいけないの』と。
守った? 何を? この、腐り切った男の、保と虚栄の巣窟を?