"長女にだけ渡された鍵" 第9話
そこには、京のオフィスで胸を張る役員待遇の男のプライドなど、片も残っていなかった。 ただ、父親の承認という麻薬に依し、その見栄のために搾取され続けた、れな被害者がいるだけだった。
「じゃあ……」 私は震える声で、今度は織に向き直った。 「織。父さんが健から毎巻きげていた万と、自分のをわせた万円……毎、現で引きされていた。そのはどこへったの?」
織のアイロンを持つが、ピタリと止まった。 彼女の背が、張るのが分かった。
「……らないわよ」 織は振り返りもせずに言った。
「嘘をおっしゃい!」 私は織の肩を掴み、無理やりこちらを向かせた。 「父さんの通帳もキャッシュカードも、晩のはあなたが管理してたはずよ! 寝たきりにい父さんが、で毎の窓へけるわけがない! あなたが引きしてたんでしょ!?」
織の目が、異様なを宿して私を睨み返した。 彼女の唇が歪み、嘲笑のような笑みが浮かぶ。
「そうよ。私が引きしてたわよ。それが何か悪いの?」
「何に使ったのよ! 毎万も!」
「私の料よ!」 織が切り声をげた。 部の空気がビリビリと震える。
「介護当! 私がこので、、無休で父さんのの世話をして、愚痴を聞いて、監していたことへの正当な報酬よ! 万なんて、民の施設に入れればもっと取られるわよ! いくらいじゃない!」
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「監……?」 健が涙で濡れた顔をげ、織を見つめた。
「そうよ、監よ!」 織はき直ったように、タンスの引きしから分い冊のノートを取りし、机のに叩きつけた。 計簿だった。そこには、父の毎の血圧、排泄の、べたもの、そして誰から話がかかってきたかが、狂気な細かさで記録されていた。
「父さんはね、私をしてなんかいなかった!『おは俺に番似ている』なんて、ただの呪いの言葉よ! 私を罪悪で縛り付けて、無料の政婦にしたかっただけ! 私がしでも友達とかけようとすると、『織、胸が苦しい、発作かもしれない』って仮病を使って引き止めたのよ!」
織の顔は、憎悪で醜く歪んでいた。
「だから私も、父さんを閉じ込めてやったの! 塩分制限だって言ってのしない流ばかりわせて、にたいって言っても子が壊れたって嘘をついてベッドに縛り付けた! 父さんが健に話しようとするたびに、スマホの充器を隠してやったわ! 父さんは私を怖がってた! 私の嫌を損ねたら殺されるとって、毎万の現を震えるで私に差ししてきたのよ!」
「お……そんなことしてたのか……」 健がずさりし、織を化け物を見るような目で凝した。
「あんたに責める資格なんてないわよ!」 織が吠える。
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「京で綺麗な着て、たまにだけ送って孝息子ぶってたあんたに何が分かるの!? 私はね、毎晩毎晩、父さんの首にをかけて『ねばいいのに、くんでくれたら自由になれるのに』って祈りながら、オムツを替えてたのよ! でもなれたら、私には何も残らない! 職歴も、結婚も、何もないただの代半の女! だから父さんをかさず殺さず、元に置いておくしかなかったのよ!!」
部のを、苦しい狂気が支配していた。
誰も、されてなどいなかった。 誰も、切にされてなどいなかった。
健は、父の見栄のために借をねて神経をすり減らし。 織は、父の孤独を質に取りながら、自分自を取りの牢獄に閉じ込め。 そして私は、「しっかり者の女」という名ばかりの称号に踊らされ、実の始末と買いしに青を費やし、裏では「嬌のない、放っておいていい娘」と切り捨てられていた。
全員が、全員の血を啜りっていたのだ。 父が敷いた、たった本の呪われたレールの平穏を維持するためだけに。
「……もう、終わりにしましょう」 私は掠れた声で言った。 元から力が抜け、座卓にをついた。
「このも、も、全部売り払いましょう。更にして、残ったを等分して、度とお互いに会わないようにしましょう。……それが、私たちに残された唯の救いよ」
健が力なく頷いた。