"長女にだけ渡された鍵" 第4話
健と織が、から私の肩越しにを乗りす。 の荒い呼吸が、え切った寝になる。
私は両で、い鉄の扉をに引いた。
キィ、と錆びた蝶番が軋む。
から漂ってきたのは、埃と、カビと、防虫剤が混ざりった、古いの匂いだった。
「……何だこれ」 健が呆然と呟いた。
庫のには、私たちが像していたような分い現の渡し袋も、の権利証の束も、価な貴属もなかった。
引きしのトレイのに置かれていたのは、茶く変した輪ゴムで束ねられた、冊の古い通帳。 そして、そのにある、冊のい学ノートだった。
通帳の表には、黒い油性マジックで、父の跡による名がかれていた。
冊目――『朋美』。 冊目――『健』。 冊目――『織』。
「通帳……?」 織がおずおずとを伸ばそうとした。
「触るな!」 健が鋭く制した。 「勝にけるな。全員の目ので、冊ずつ確認するんだ」
私は震える指先で、番にあった『朋美』とかれた通帳を取りげた。
それは、方の第方のもので、私が代半、母がくなった直に父から「おの名義で作っておいた。母さんの命保険の部と、おがに毎入れてくれた活費の余りを積みててある。いざというの持参にしなさい」と見せられたきり、父が預かっていたものだった。
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あの、記帳されていた額は百万円だった。 方で暮らす若い女にとって、それは途方もないであり、父が私をどれほど切にってくれているかの証拠のようにえて、誇らしかった。 「おはしっかり者だから、このはおが本当に困ったまで、俺が守っておく」 そう言われて、印鑑ごと父に預けたのだ。
私は息を殺しながら、通帳をいた。
ページをめくるの擦れる音が、妙にきく響く。
「……え?」
私の界が、ぐらりと揺れた。
印字された数字の列。 最のに刻まれていた残は、私の記憶にあるものとは全く違っていた。
残――『14,250円』。
「……万?」 織が横から覗き込み、目を丸くした。 「違う……万千円よ。これ……どういうこと?」
私の指が、氷のようにたくなっていく。
百万円あったはずの預は、ある期を境に、定期に吐きされていた。 万、万、百万。 ごっそりと引きされ、最には利息の数百円だけが寂しく加算され、残されたのはわずか万千円。
「な、何に……使ったの?」 私の声が震えた。 「父さん、自分の医療費に使ったの? でも、入院費も治療費も、父さんの座から落ちてたはずよ。りない分は私が毎万ずつ補填してた……じゃあ、このおはどこへ消えたの?」
引きされた付を見る。 今からの。 父がまだ元気で、畑仕事にていた期だ。
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パラリと、通帳の見返しの部分から、つ折りにされた切れが滑り落ちた。 畳のに落ちたそれを、健が反射に拾いげた。
「健、見せて!」 私がを伸ばした瞬、健の体が張った。
彼のが止まり、顔からサッと血の気が引いていくのが見えた。 いつも徹で、を表にさないエリートの弟が、まるで幽霊でも見たかのように目を見き、喉をひくつかせている。
「健?」
私は彼のから、その切れを奪い取った。
それは、の払戻請求の控えだった。 定期預を途解約し、全額を現で払い戻した際の控え。
額――『2,800,000円』。
そして、その用の。 『代理申請』の欄にる、ボールペンの跡。
父の震える文字ではない。 がりに鋭く尖った、見慣れた神経質な文字。
そこには、はっきりとかれていた。
代理氏名――『宮本健』。
私の呼吸が止まった。
血の気が気にから引き、の奥でキーンという鋭い鳴りが響き始める。
「健……」
私の声は、自分でも信じられないほどく、掠れていた。
「これ……何?」
健は答えなかった。 唇を固く結び、線を畳の窪みへと落としたまま、微だにしない。
「何って聞いてるのよ!」 私は叫んでいた。 きてきて、弟に対してこんな切り声をげたことは度もなかった。
「私の通帳のを、なんであんたが全額引きしてるの!? って、あんたが『会社で昇した、規事業のちげを任された』って、実に級ワイン持って帰ってきた期じゃない! なんであんたが、私の……母さんの遺産と私の活費を……!」