"長女にだけ渡された鍵" 第2話
「そんなの、あなたので格好つけてただけよ!」 織がちがりかけ、座卓のの茶碗がカタカタと音をてた。 「父さんが番頼りにしてたのは、毎晩枕元で愚痴を聞いて、背をさすってた私よ! 健はたい、朋美は頑固で説教くさいって、私にだけ本音を言ってたの!」
空気が気に濁った。 健の顔から余裕の笑みが消え、たい苛ちが張り付く。
「……織、おさ。自分が犠牲者ぶってれば、このとが全部自分のものになるとでもってるのか?」
「何よその言い方! 盗猛々しい!」
私は黙って、喪のポケットのにを入れた。 指先に触れる、くてたい真鍮の触。
さくて、ずっしりとい鍵。
父が息を引き取る、個のベッドで、識が朦朧とするで私のを握り締め、枕のから渡してきたものだった。
あの、父の乾いた唇から漏れた言葉が、今もの奥にこびりついている。
『朋美……おが番しっかりしている。のは、世らずでがくて、放っておいたら何をするか分からん。……庫の鍵はおにしか渡せん。弟と妹のことは、おが仕切って、導いてやってくれ』
あの言葉があったからこそ、私はこの、誰にも音を吐かずに葬儀から法までの雑務をで背負ってきたのだ。 母がにくなって以来、私は「しっかり者の女」
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という荷を、誇りとして背負わされてきた。その誇りの証が、今、私ののにある。
「もういい加減にしなさい!」
私は机を平で叩いた。 乾いた衝撃音が部に響き、言い争っていたがピタリとを噤む。
私はポケットから、ゆっくりと真鍮の鍵を取りし、座卓の真んに置いた。
古い、字の刻みが入った鍵だ。
「これ……」 織が息を呑んだ。
「父さんの寝にある、備え付けの据え置き庫の鍵よ」 私はをまっすぐに見据えて言った。 「父さんがくなる直、私にだけ渡してくれたの。『おが番しっかりしているから、ののことはおに託す』って。……だから、誰がを継ぐとか、遺産をどう分けるとか、毛な言い争いはやめて。まず、父さんが何を残したのか、現実を確かめましょう」
私が言い終えた瞬、部には完全な静寂が戻るはずだった。 私が女としての責任を全うし、を納得させるための、決定なカードになるはずだった。
だが、返ってきたのは静寂ではなかった。
「……は?」 織のから、乾いた掠れ声が漏れた。 彼女の目は見かれ、驚きというよりは、侮蔑にいを宿していた。
「姉さん、それ……何言ってんの?」
「何って、父さんから直接預かった鍵よ」
「嘘ばっかり」 織がで笑った。 「父さんがそんなこと言うわけないじゃない。だって、父さんがくなるの夜、私にを握って言ったのよ。
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『織、おだけが私に番似ている。器用で、損ばかりして……おをここに縛り付けて悪かった。このは、全部おのものだ』って。そう言って私のを引いて、泣いたのよ? なんで朋美姉さんに託すなんて話になるのよ!」
織の声は震えていた。 その震えは演技などではなく、の底から自分の信じている世界を侵されたの、純粋な恐怖とりだった。
私は眉をひそめた。 「織、父さんはせん妄状態だったんじゃないの? くなるはもう呼吸も浅くて……」
「せん妄なんかじゃない!」 織が叫んだ。 「はっきり私の目を見て言ったの!『朋美は真面目すぎて融通が利かないし、健は京の活にかまけてがれた。俺を本当に理解してくれたのは、番似ているおだけだ』って!」
「……おいおい」
それまで黙ってやり取りを見ていた健が、く、喉の奥を鳴らすように笑いした。 その笑い声には、底れないたさと軽蔑が混ざっていた。
「とも、茶番はやめろよ。聞いてて恥ずかしくなる」
健はスーツの内ポケットにを差し入れた。 取りされたのは、つ折りにされた枚の便箋だった。 表面には、見慣れた父の震えるような毛の文字で『健へ』とかれている。
「父さんがくなる半に、俺の虎ノのオフィスに直接郵送されてきただ」
健はそれを机のに放りした。
「読めよ。そこに何ていてあるか。