"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第17話
それを今さら、指輪つ、千万円で塗り替えられるとでもっていたのですか?」
「奈緒さん、あなた、親戚同ので私に恥をかかせる気……!」
「恥をかいているのは、あなた自です!」
私の声が、墓に鳴のように響き渡った。
「あなたはいつも『神崎ののため』『んだ亮介のため』と言い続けてきました。でも、本当にそうでしょうか? 亮介さんが、あなたの族の繁栄を望んでいたと、本気で信じているのですか?」
「当たりでしょう!」
義母はヒステリックに叫び返した。能面のような仮面が完全に剥がれ落ち、鬼のような形相がわになる。
「亮介は私の息子よ! 神崎の男として、を守る責任を誰よりも自覚していた派な跡取りよ! んだ息子を侮辱するのはやめなさい!」
「侮辱しているのは、あなたです」
私は静かにバッグをけた。 そして、からあの茶のテディベアを取りした。
親戚たちが「何だ、そのぬいぐるみは」「子どものおもちゃをこんな所で……」と眉をひそめる。
「これは、亮介さんがくなる、病で葵のために遺したものです」
私はテディベアをく掲げ、義母の目のに突きつけた。
「亮介さんは、っていました。自分がねば、あなたが葵を自分のエゴの具として奪おうとすることを。だからこそ、自分の本当の声を、このに遺していたんです」
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「な……何を馬鹿なことを……!」
義母の目が、恐怖で見かれた。
私は迷うことなく、テディベアのをく押し込んだ。
カチリ。
静寂に包まれた墓に、械のノイズが響いた。 親戚たちが固唾を呑む。 そして、たいを突き破って、あのスピーカーから、夫の掠れた、しかし鋼のようにい声が流れした。
『――葵。おの命よりもいものなんて、この世につもない』
親戚同の息が止まった。 紛れもない、神崎亮介の肉声だった。
『葵は、ママの名を継ぎなさい。野葵になりなさい。……誰の具にもならず、誰の代わりにもならず、おのきたいように、自由に笑ってきてくれ』
墓に刻まれたの紋ので、者の声が霊した。 義母が守ろうとしていた「神崎の名」そのものを、墓のに眠る最の息子自が、真っ向から否定し、呪いとして切り捨てている。
『神崎の名なんて、ただのたい碑と同じだ』
その決定な言が流れた瞬、義母の喉から「あ……ああ……」と、潰れたカエルのような鳴が漏れた。
ガクン、と膝から力が抜けたように、義母はそのに崩れ落ちた。 入れのき届いた喪の裾が、墓の砂利とのに無残に広がる。 から滑り落ちたのジュエリーケースがき、あのの婚戒が、チャリンと音をててたい砂利のに転がりた。
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「嘘よ……嘘よ……亮介……どうして……」
義母はだらけので面を掻きむしり、信じられないものを見るようにテディベアを見つめていた。
「私が……私がどれだけあなたのために尽くしてきたとっているの……! 神崎のを守るために、どれだけ血の滲むようないをしてきたと……! それを、あの女の名に変えろだなんて……そんなの、あんまりじゃないの、亮介えぇぇッ!!」
義母の絶叫が、墓に響き渡った。 それは息子のを悼む母の声ではなかった。 自分が涯をかけて築きげ、信仰してきた「名」という神殿が、最の息子のによって根底から爆破されたことへの、絶望と狂気の叫びだった。
親戚たちは、誰として義母に駆け寄ろうとはしなかった。 叔母の恵子は青ざめてずさりし、本の老である雄は、苦虫を噛み潰したような顔でを仰いだ。
「……もういい」
雄が、吐き捨てるように言った。
「本がそこまで拒絶していたのなら、野がとやかく言う筋いはない。……姉さん、みっともないからおやめなさい」
「雄さん……! あなたまで何を言うの!? 神崎の血筋なのよ!? 亮介の娘なのよ!?」
義母がだらけの顔をげて縋り付こうとしたが、雄はたく線を逸らし、踵を返した。
「神崎の板にを塗ったのは、おさんだよ、芳さん。んだ息子にここまでまれていたとはな……これ以付きいきれん。
帰るぞ」
「あ、ちょっと、雄兄さん! 待ってよ!」
恵子たち親戚も、まるで疫病神から逃げるように、に段へと向かってっていった。