"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第16話
親戚たちから「さすが姉さんだ」「仏のようなだ」と、わざとらしい賛嘆の声ががる。
私は、寒に吹かれながら、その茶番をややかに見つめていた。 昨の私なら、この異様な同調圧力に圧倒され、恐怖でを竦ませていたかもしれない。 だが、今の私には、胸の奥に確固たる炎が灯っていた。
「お断りします」
私の静かな言が、墓の静寂に落ちた。
親戚たちのざわめきが、ピタリと止まった。 伯父の雄の顔が、りで赤黒く染まっていく。
「何だと……!? 貴様、神崎の慈を踏みにじる気か!」
雄は声をげると、股で私に詰め寄り、私の背に隠れていた葵の腕を力任せに掴もうとを伸ばした。
「おい、葵! こんなのおかしい母親の言うことを聞く必はない! おは神崎の子供だ、おばあ様のところへ来なさい!」
きなのが、歳の女の細い首に伸びる。
その瞬だった。
「さわらないでッ!!」
墓に響き渡ったのは、をつんざくような、鋭く裂けるような女の叫び声だった。
葵が、雄のを力いっぱいに払いのけたのだ。 親戚同が息を呑んだ。あのしく、いつも母親のろに隠れていた幼い葵が、全の毛を逆てた物のように、りに震えてち塞がっていた。
雄が呆然とを引っ込める。 葵は私のに躍りると、両を広げて私を庇うようにち、その真っ直ぐな瞳で、正面につ義母・芳を指差した。
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「おばあちゃん、うそつき!!」
澄んだ、何の衒いもない子どもの声が、たい墓の空気を切り裂いた。
義母の眉がピクリとね、揺がった。
「葵ちゃん……? 何を言って……」
「おばあちゃん、うそつきだもん! あおいのことも、ママのことも、ずっといらないって言ってたじゃない!!」
葵の目から、粒の涙がボロボロと零れ落ちた。 だが、その線は決して義母から逸らされなかった。
「あおい、おぼえてるよ! 、パパがんじゃったの夜! がたくさんってた! おばあちゃん、玄関でママのおを引っ張って、に追いしたでしょ!!」
親戚たちの顔から、斉にが失われた。
「葵ちゃん、何を馬鹿なことを……そんな昔のこと、覚えているはずが……」
叔母の恵子が慌ててを挟もうとしたが、葵の叫びは止まらなかった。 、歳のさな胸の奥底に澱のように溜め込まれていた記憶が、濁流となって溢れしていた。
「あおい、げた箱のうしろで見てたもん! おばあちゃん、ママに言ったでしょ!『あんたはもううちのじゃない、跡取りも産めないはすぐていけ』って! ママが泣いて、パパのお骨を触らせてくださいってお願いしたのに、ドアをバタンって閉めたでしょ!!」
墓が、を打ったように静まり返った。
の音だけが、ヒュウヒュウと墓のを吹き抜けていく。
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親戚たちの線が、狼狽したように義母へと集まった。 義母の顔は、壁のように真っになり、唇が刻みに震えていた。
「そ、れは……あのは、気が転していて……」
「うそばっかり!」
葵は叫び、泣きながらを踏み鳴らした。
「パパのお墓を作ったときも、おばあちゃん、パパのお写真にってた!『なんで男の子を残さなかったんだ』って! あおいに『パパの代わりになれ』って言った! あおい、パパの代わりなんかじゃない! あおいは、あおいだもん!!」
歳の子どもの告発。 そこに、の計算も、法な駆け引きもしない。 ただ、傷つけられた魂が放つ、純度百パーセントの真実だった。
親戚の男たちが、気まずそうに線を泳がせ始めた。 「おい、本当にあんなことを言ったのか……?」 「のに、孫にあんなことを……?」 声の囁きが、義母のプライドを無残に削り取っていく。
「葵ちゃん……違うのよ、おばあちゃんはあなたのことをって……」
義母が震えるを伸ばし、葵にづこうとした。 だが、その歩を、私が遮った。
私は葵の肩を優しく抱き寄せ、義母のにちはだかった。
「芳さん」
私は初めて、義母を「お義母様」ではなく、その名で呼んだ。 敬称を削ぎ落とした私の声に、義母がハッと息を呑んだ。
「子どもは、がっている以に、すべてを見ています。そして、すべてを覚えているんです。
あなたが、私たちをどのように踏みにじり、どのように切り捨ててきたか。