"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第11話
叔母の恵子からのメッセージには、あの紋入りランドセルの写真とともに、こう記されていた。
『お姉さんから聞きました。本当に派なランドセルね。父親をくした葵ちゃんのために、あそこまで尽くしてくれるお祖母様がいて、あなたたちは本当に幸せよ。 奈緒さん、妙なを張って神崎の姓を捨てるなんて、親戚同絶対に認めませんからね。んだ亮介さんが葉ので泣きますよ。母親の儘で子供から派な名を奪うなんて、として恥ずかしくないのですか?』
の親戚からも、似たり寄ったりのメッセージが届いた。 『恩を仇で返すな』 『父親の供養のためにも、神崎の名を守るのが妻の義務だ』 『子供の将来を考えなさい』
正義の仮面を被った、無責任な集団リンチだった。 彼らにとって、亮介がどんないで命を落としたのか、私と葵がこのどれほどの苦しみを経てきたのかなど、どうでもいいのだ。 ただ、「由緒正しい神崎の秩序」を守り、枠からはみそうとする未を屈させるに浸っているだけなのだ。
胸が激しく波打った。 窒息しそうなほどの憤りが、胃の底からせりがってくる。
だが、今の私には、昨のような迷いは微もなかった。 亮介の遺志をった今、これらの呪詛のような言葉は、ただのれな吠えにしか聞こえなかった。
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午ちょうど。 アパートのに、黒塗りの型級セダンが滑り込んできた。 部座席の窓がき、品なツバの広い子を被った義母が招きをした。
「奈緒さん、葵ちゃん、お乗りなさい」
私は、昨夜届いた巨な桐箱の段ボールを抱え、もう片方ので葵のを引いて階段をりた。 トレンチコートのポケットには、あのティッシュに包んだ婚戒を入れてある。
「ママ、あのくるま、のるの……?」
葵が怯えたように私の太ももにしがみつく。
「丈夫よ、葵。ママがずっとおててを繋いでいるからね」
私は葵を抱きげ、のドアをけた。 内には、義母の焚き染めた檀のの匂いが充満していた。 部座席に葵を座らせ、私はその隣に腰をろした。 抱えてきた巨な段ボール箱は、私の元に置いた。
が滑るようにりす。
義母は葵のを撫でようとを伸ばしたが、葵が反射にを引いたため、そのは空を切った。 義母の眉がピクリとねたが、すぐに取り繕うように、膝のに置いていた質な革のバッグをけた。
「葵ちゃん、今は座のデパートへくのよ。番等なワンピースを誂えてあげますからね」
葵は返事をせず、私のを両でぎゅっと握りしめて俯いていた。
義母は葵から線をし、隣の私へと向けた。 その瞳には、昨夜の話とは打って変わった、獲物を値踏みするような徹なが戻っていた。
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義母はバッグから、冊の真しいの通帳を取りした。 そして、それをわざとらしく私の膝のへと滑らせてきた。
「……これは何ですか?」
私が尋ねると、義母は顎をツンとげて微笑んだ。
「きなさい」
言われるままに通帳をくと、そこには私のパートの収の何倍にも及ぶ数字が印字されていた。
【お預り額 10,000,000円】
千万円。
「葵ちゃんのために、神崎の教育資座を設したのよ」
義母は、まるで貧しい者に恵みを与える貴族のような調で、静かに語り始めた。
「学はもちろん、将来の貫、そして学までの学費は、すべてこの座から神崎がします。これだけあれば、自由ないは切させずに済むでしょう」
「……」
「奈緒さん。あなたも分かっているはずよ。あなたのその取り万にも満たない契約社員の料で、この子にどれだけの教育を受けさせられるというの? 狭いアパートで、爪にを灯すような活をして、惨めないをさせるのが母親のかしら?」
義母はを乗りし、私の元に顔をづけた。 その吐息から、甘ったるい檀のりと、酷な計算の匂いが漂ってくる。
「条件はつだけ。分かっているわね? 今に、庭裁判所へってあの申しての類を完全に破棄すること。そして、葵ちゃんを『神崎葵』として学に入学させること。