"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第3話
だが、あの義母の異常なまでの変わり様と、突如差しされた指輪の真を確かめずにはいられなかった。 もし本当に義母が改し、葵に祖母としてのを注いでくれるなら、父親のいない葵にとって、それは決して悪いことではないのかもしれない――そんな甘い期待が、私ののどこかに数ミリだけ残っていたことも否定できなかった。
神崎の敷は、と何つ変わっていなかった。 入れのき届いた広い本庭園、な構え、く聳える灯。 私たちが暮らす狭なアパートが何軒も入ってしまうようなその敷をにすると、自分がどれほど違いな世界にを踏み入れようとしているのかを痛させられる。
「ママ、ここ、パパのおうち?」
葵が私のトレンチコートの裾をぎゅっと握りしめ、そうに見げてきた。 幼い葵の記憶のにも、この敷のたさがっすらと刻まれているのかもしれなかった。
「丈夫よ、葵。パパの写真にご挨拶しに来ただけだからね」
葵のさなを撫で、私は玄関の引き戸をけた。
「ごめんください」
声をかけると、奥の廊からパタパタとりの音が響き、割烹着を着た義母が満面の笑みで現れた。
「あら、奈緒さん! よく来てくれたわね。さあさあ、がってちょうだい。葵ちゃん、いらっしゃい!」
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昨の涙が嘘のように、義母の声は弾んでいた。 にりてきて、自ら葵のさなスニーカーを揃え、葵の肩にを置く。 葵は怯えたように私のろに隠れたが、義母は気にしたもなく、「見りしちゃって、いこと」と目を細めた。
通された広には、すでに豪勢な料理が並んでいた。 皿に盛られた鯛の尾付き、刺の盛りわせ、級そうな折詰。 そして、座には義母の妹である叔母の恵子をはじめ、本の親戚筋が、、すでに座になって座っていた。
私たちが部に入った瞬、親戚たちの線が斉に突き刺さった。
品定めをするような、好奇と侮蔑の混ざった線。 、夫の通夜で私を無し、笑を浮かべていた面々だった。
「まあ、奈緒さん、久しぶりねえ」
叔母の恵子が、わざとらしいい声で言った。
「すっかり痩せちゃって。で子供を育てるのは変でしょう。でも良かったわねえ、お姉さんがこうして広いで迎え入れてくれて」
「本当にそうよ。姉さんったら、あのは気が転していたからって、ずっと奈緒さんのことを気にかけていたのよ。女つじゃろくな教育も受けさせられないだろうから、神崎で面倒を見てあげるのが番だって」
親戚の男たちが、ビールのグラスを傾けながら々に言った。
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胃の腑が雑巾のように絞られる覚がした。
「広い」? 「迎え入れてくれた」?
彼らの言葉の端々からは、に私を理尽に追いしたことへの反省など微もじられなかった。 あるのは、「れな母子にを差し伸べてやった、寛で慈い神崎」という、吐き気を催すほどの自己陶酔だった。 まるで、私たちが飢えに耐えかねて、神崎の施しを求めて戻ってきたかのような物言いだった。
「さあ、皆さん、昔のことはもういいじゃありませんか」
義母が座敷の真んにち、皆を宥めるように両を広げた。
「奈緒さんは、私の切な息子の妻です。そして葵ちゃんは、神崎の血を引く切な子供。これからは私がろ盾になって、を支えていきますから」
義母はそう宣言すると、私の隣に座り、優しく私の肩を抱いた。 親戚たちから「さすが姉さんだ」「派だよ」と嘆の声が漏れる。
茶番だった。 完璧に演された、義母のための「美談」の台。 私は膝ので握りしめた拳が震えるのを必で抑えていた。 葵のために、今ここで席をつわけにはいかない。このたちが何を考えているのか、最まで見極めなければならない。
事が始まった。 葵には特の握り寿司が振るわれ、義母は甲斐甲斐しく葵の皿に料理を取り分けた。
「葵ちゃん、美しい? これからはね、いつでもこのおに遊びに来ていいのよ。
広いお庭もあるし、パパが使っていたお部もそのまま残してあるの。学にがったら、ここで勉してもいいのよ」