"元妻の弟に渡した6万円と12年前の手紙" 第22話
でも今は違う。
私はされていなかったわけではない。
ただ、糸が致命にすれ違っていただけだ。
ベンチに座っていると、スマートフォンがく震えた。
画面を見ると会社の同僚からの業務連絡だった。
「の会議の資料、机のに置いておきました。確認をお願いします」
私はすぐに返信を打った。
「ありがとう。確認します」
何気ない常のやり取りが、今の私にはとてもおしくじられた。
私はちがり、公園のへ向かって歩き始めた。
帰りにスーパーへ寄って、今の夕の買い物をしよう。
さおりが好きだったメニューを作るのもいいかもしれない。
以なら、彼女をいすような料理はでも作らなかった。
でも今は、彼女のいと緒に卓を囲むことができる気がする。
マンションに帰り、鍵をけて玄関に入る。
靴を脱いでリビングへむと、模様替えをしたばかりの空が私を待っていた。
窓際に移させたダイニングテーブルが、夕暮れのを受けて静かにっている。
私は壁にを当て、しひんやりとした壁の触を確かめた。
この壁もも井も、もう誰の干渉も受けない私だけの所だ。
私は誰もいない部に向かって、さく声をかけた。
「ただいま」
もちろん返事はない。
でもそれでいい。
私がこの部の主として、自分のために発した言葉なのだから。
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キッチンにち、買ってきた材を蔵庫にしまう。
を洗い、エプロンをつけて夕の準備に取りかかる。
作るのは肉じゃがとほうれんのお浸し。
どちらもさおりが得だった庭料理だ。
で暮らしていた頃、本のが恋しくなると彼女はよくこれを作ってくれた。
スーパーでに入る限られた本の調料を使って、夫しながらを再現していた。
エプロン姿の彼女が見をしながら笑っていた景が目に浮かぶ。
「やっぱり本の醤油じゃないと、が決まらないね」
私は彼女のレシピをいしながら、しだけ砂糖をなめにした。
さおりの付けはし甘かったけれど、私はし醤油の効いたの方が好きなのだ。
過をそのままなぞるのではなく、今の私の好みにわせてを変える。
そんなさな変化が今の私の自を表しているようで、よかった。
包丁で野菜を刻むリズミカルな音が、静かな部に響き渡った。
私はもう過のと戦う必はない。
彼女が私に残してくれたこの所で、私は私のを刻んでいく。
鍋にをかけ、汁のりが部のに広がり始めた。
窓のはすっかり暗くなり、くの灯がポツポツと灯り始めている。
私はキッチンの窓辺に寄りかかり、夜空に浮かぶ細いを見げた。
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さおり、私ちゃんと自分のでっているよ。
あなたに配されるようないじゃないからね。
私はのでそう呟き、ゆっくりとコンロのをめた。
静かで満ちりた夜が、私のしい常を包み込んでいた。
法務局での続きから1週、私は再びあの無質な建物を訪れていた。
窓で引換証と本確認類を提示すると、「登記識別報通」とかれた緑の類が渡された。
目隠しシールが貼られたそのは、私がこのマンションの完全な所者であることを証する、最もな法類だ。
担当の職員が告げた。
「お続きは以で完となります。切に保管してください」
その言葉を聞いて、私は類を丁寧にクリアファイルへ収めた。
帰り、バックに入ったそのファイルのみを、私は何度も腕で確かめた。
これで本当に終わったのだ。
12の誤解と、それに続く1のの理。
その全てに法なでも確な区切りがついた。
その週末、私は久しぶりに友たちと事にかけた。
集まったのは会社の同僚でもあり、付きいのある同代の女性3だった。
彼女たちは私が12に婚したことをっているが、その理由やさおりのについては詳しく話していなかった。
乾杯の、向かいに座っていた友が私の顔をまじまじと見つめて言った。
「最、なんだか顔がいいわね。