みかん小説
本棚

"元妻の弟に渡した6万円と12年前の手紙" 第13話

私は息をんだ。

いわゆる扶養照会という続きのことだ。

「なつみに連絡がくような続きは、絶対にしないでくれ、って。姉ちゃんは担当のにをげて、申請を諦めました」

自分の活が困窮してでも、私を巻き込まないことを最優先にしたのだ。

胸の奥がぎゅっと締め付けられた。

1で痛みに耐え、経済なに押し潰されそうになりながら、彼女は私の平穏な活を守っていた。

自分から私を突き放しておきながら、最まで私を庇い続けていたのだ。

私のから無識のうちにそんな言葉がこぼれていた。

「バカだよね。本当に」

てつや君も窓のを見つめながら、さく同した。

「ええ、本当にバカな姉ちゃんでした」

はいくつかの駅を過ぎ、目のさな駅に滑り込んだ。

改札を抜けると、しひんやりとしたが私たちの頬を撫でた。

駅にはさなロータリーがあり、古い商が続いている。

さおりが12、息をして、歩いて、買い物をしていた町。

私はその空気を胸いっぱいに吸い込み、彼女の残りを探した。

てつや君がち止まって言った。

「お墓へくに、を買わせてください」

彼の案内に従い、商の端にあるさなに入った。

先にはとりどりの菊や百がバケツに入って並んでいる。

奥からてきたエプロン姿の配の女性が、彼を見て声を弾ませた。

広告

「あら、てつや君じゃないの?」

てつや君は丁寧にをげた。

「こんにちは。ご無汰してます」

女性は興そうに彼を見た。

「スーツなんか着てどうしたの? お仕事決まったの?」

彼がそう答えると、女性は目を細めて優しく微笑んだ。

「はい。なんとか。今は姉ちゃんの墓参りに来ました」

女性の言葉はただのお世辞ではなく、からの実に満ちていた。

「そう、さおりさんもさぞんでるわよ。本当にあんなに頑張りで優しいはいなかったもの」

さおりは町でも自分の病気を隠して、周囲に優しく接していたのだ。

彼女がここできていた証を、第者のから聞かされた気がした。

女性は私の方を見て、し議そうな顔をした。

てつや君は瞬だけ言葉に詰まり、そう紹介してくれた。

「こちらは、姉の昔からの切な友です」

元妻だとは言えなかったのだろう。

私もそれにわせて、をげた。

「お世話になっております」

女性は納得したように頷き、際よくを見繕ってくれた。

「さおりさんはいが好きだったからね。しめに入れておくわ」

い。

その言葉を聞いて私はハッとした。

12、私たちが緒に暮らしていたマンションのリビング。

彼女はよく、さなガラスの瓶にいを飾っていた。

派なより落ち着くでしょうと言って笑っていた彼女の顔が蘇る。

広告

12経ってもむ所が変わっても、彼女の根本は何も変わっていなかった。

私たちが共していた記憶の部が、この町にも確かに根付いていたのだ。

束を受け取り、をた、私はてつや君に歩み寄った。

「ありがとう。さおりのこと、切な友って言ってくれて」

彼はし申し訳なさそうに線を落とした。

「本当は族って言いたかったんですけど」

私はそう答えて、彼と並んで歩き始めた。

「いいの。今はそれで分だから」

商を抜けるとしずつり坂になり、宅の景へと変わっていく。

沿いにはさな公園があり、古いベンチが1つ置かれていた。

てつや君が歩きながらぽつりと呟いた。

「姉ちゃん、が悪くなってからはよくあのベンチに座ってました」

彼はベンチを指差して言った。

「が通るのが見えるから、それを見てを潰してたみたいです」

私はそのベンチを見つめ、そこに座り痩せた彼女の背を像した。

その坂を登り切った先に、町の共同墓があった。

たいが、並んだ墓のを吹き抜けている。

私は束を抱えたままち止まった。

ここから先へめば、私はもう完全に彼女のという現実から逃げられなくなる。

し先を歩いていたてつや君が振り返って私を呼んだ。

「なつみさん」

彼は私にを向けた。

「こっちです」

彼の声に背を押されるように、私はいを踏みした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: