みかん小説
本棚

"元妻の弟に渡した6万円と12年前の手紙" 第11話

「姉ちゃんも病気で入退院を繰り返してたから、俺が母さんの面倒を見るしかなかったんです」

私は受話器を握りしめながら、彼の言葉にじっとを傾けた。

私がこのマンションで1、さおりをみながら平穏に暮らしていた。

その裏で彼らは、病気と介護と貧困ので必にもがいていたのだ。

さおりは自分の命が削られていくで、倒れた母親と膝を壊した弟を抱え込んでいた。

彼女が私をざけたのは、この過酷な現実に私を巻き込まないためでもあったのだ。

数に母親がくなり、その直にさおりも息を引き取ったという。

残されたてつや君には、痛む膝と空の履歴だけが残った。

齢と怪のせいでしい仕事は見つからず、貯も底をついた。

今は自治体のルールに沿った資源回収の期作業で何とかいつないでいる状態だった。

彼の声はしだけ震えていた。

「あの2万円、面接に着ていくと交通費に使わせてもらいます」

私は彼に団体の連絡先と担当者の名を伝え、話を切った。

話を切った、私は静まり返った部でもう度さおりのを見た。

彼女が守りたかったのは、私だけではなかったのだと改めてう。

自分の、器用な弟が1できていけるのか、きっと最まで配していたはずだ。

広告

私が彼に支援団体の報を渡したのは、決して偶然ではない気がした。

さおりが残した見えない糸が、私とてつや君を再び引きわせたのかもしれない。

それから数週、私は彼から直接の連絡を受けなかった。

支援団体の担当者に事を聞くこともできたが、私はあえてしなかった。

彼が自分の力でちがるのを、静かに待つべきだとったからだ。

私がを貸しすぎれば、それはさおりの自己犠牲と同じになってしまう。

誰かのを代わりに背負うことは、決してお互いのためにはならない。

12遅れてったその教訓を、私はてつや君との関係で厳格に守りたかった。

のがたくなり始めた10の初め、私の携帯話が鳴った。

画面にはてつや君の番号が表示されていた。

話にるなり、しずった声がび込んできた。

「なつみさん、決まりました」

支援団体の面談を経て、郊にあるリサイクルセンターでの仕事が決まったという。

まずは週に4、の勤務からスタートするらしい。

彼は照れくさそうに言っていた。

「決して料がい仕事ではないんですけど」

それでも社会保険があり、決められたに働き、根のある所で作業ができる。

膝の負担も、以の配送の仕事やでの空き缶拾いよりずっとないという。

広告

彼の言葉には、12にはなかったさな誇りが滲んでいた。

「自分で履歴をいて、面接にってきました」

私はく返し、から堵の息を吐きした。

「良かったね」

残した2万円で、彼は古着を回り、自分のサイズにうスーツを買ったらしい。

私が無理やり握らせたおが、彼を正しく社会へ繋ぎ直すための切符になったのだ。

さおりがもしきていたら、自に向かって歩きした今の彼を見てどれほどんだろうか。

そんなことを考えていると、てつや君がふと声を潜めた。

「あの、なつみさん、もしよければ今度の週末、しだけをくれませんか?」

私はし驚き、どうしたのかと理由を尋ねた。

「姉ちゃんの墓に、緒にって欲しいんです」

その言葉に、私の胸の奥が再びぎゅっと締め付けられるのをじた。

さおりの墓。

2の11にひっそりと建てられ、私にはすららされなかった所。

私は無識のうちに、テーブルのにあった古い封筒を指でなぞっていた。

てつや君は言葉を選びながらゆっくりと続けた。

「俺、初任がたら、まず姉ちゃんに報告にこうとってて」

彼は言葉を継いだ。

「そこに、なつみさんもいて欲しいんです」

彼は静かに言った。

「姉ちゃんも、きっと待ってるから」

私はしの、声をせずに沈黙した。

さおりの墓のにつ自分がどういうになるのか、全く像できなかった。

していたとったからと言って、私が彼女を完全に許せるかどうかは分からない。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: