"元妻の弟に渡した6万円と12年前の手紙" 第3話
さおりは絶対に族を見捨てるようなではなかった。
だからこそ、私たちは壊れてしまったのだ。
それなのに、あのてつや君の姿はどう考えても自然だった。
共同預のおは体どこへ消えてしまったのだろう。
考えれば考えるほど、過の記憶と今の現実が噛みわない気がした。
キッチンでお湯を沸かしながら、私は窓のの暗を見つめた。
はまだり続いている。
てつや君は今夜、どこで寝るのだろうか。
あの6万円で、温かい事くらいはべてくれているだろうか。
さおりに似た器用な横顔が、私ののかられなかった。
それでも、になればまたいつもの常が始まる。
会社の仕事があり、同僚たちとのない会話がある。
私は過の傷をわざわざけるような真似はしない。
12といういが、私に1できる術を教えてくれた。
さおりのことも、てつや君のことも、これで終わるはずだった。
めたお茶をみ干し、私はベッドに入った。
井を見ながら目を閉じると、12のさおりのたい声が蘇った。
「もう続けたくない。そうってくれていい」
あのの彼女の目は、私を完全に拒絶していた。
その記憶が、今も私の胸の番柔らかい所をえぐる。
私は毛布をくかぶり、あの族のことはもう考えないように努めた。
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これで良かったのだと自分に言い聞かせた。
偶然の再会と6万円の施し。
私ができることはそれだけであり、それ以踏み込む権利も義務もない。
私はもう、妻のではないのだから。
私はゆっくりと呼吸を繰り返し、眠りについた。
あのの再会から3が過ぎた。
私は何事もなかったかのように、いつもの常に戻っていた。
会社ではしい企画の準備に追われ、余計なことを考える隙もなかった。
てつや君の惨めな姿は、折私のをよぎった。
それでも、あの6万円で私と彼の関係は完全に断ち切られたはずだ。
自分にそう言い聞かせながら、仕事を終えてマンションへ帰ってきた。
エントランスの照が、磨かれたに反射してたくっている。
私は習慣で郵便受けのダイヤルを回し、の郵便物を取りした。
チラシや公共料の細に混じって、通だけ異質なものがあった。
ずっしりとみのある、茶い定形の封筒だった。
私は裏返して差の欄を見た。
その瞬、私のはピタリと止まった。
「てつや」
乱雑だが、どこか見覚えのある字でそうかれていた。
所はかれておらず、名だけが黒いボールペンでく記されている。
なぜ彼が私の所をっているのか、瞬だけ疑問にった。
だがすぐに理由にい至った。
私は12から、さおりと緒に買ったこのマンションから1度も引っ越していない。
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彼にとっては、姉夫婦が暮らしていた記憶のの所そのままなのだ。
封筒を持ったに、じわりと嫌な汗が滲んだ。
おがりないと、さらに無してくるつもりなのだろうか。
12の、定職に就かずフラフラしていた彼の姿が嫌でも蘇ってくる。
あるいは、さおりが私に何か用事があって弟を使いにしたのだろうか。
今更どんな顔をして連絡してくるというのか。
私はいため息をつき、封筒をバックに押し込んでエレベーターに乗った。
部に入り、コートも脱がずにダイニングテーブルへ向かった。
バックから茶い封筒を取りし、テーブルのに置く。
この部は、12にさおりと緒に選んだ具がそのまま残っている。
彼女の気配が染み付いたこの所で、彼女の弟からのを読むことになるとはわなかった。
しの、触れることすらためらわれた。
これをければ、ようやく忘れかけていた過の沼に再びを踏み入れる気がしたからだ。
しかし、無して捨てることもできなかった。
私はを決して、封筒の糊付けされた部分をハサミで切りいた。
からてきたのは、3つのものだった。
1つ目は、剥きしのまま無造作に入れられた4枚の1万円札。
2つ目は、ドラッグストアで売られているようない便箋の束。
そして3つ目は、端が擦り切れ、全体が黄ばんで変した古い封筒だった。