"青い痣と一冊の手帳" 第17話
ブランクはあったものの、会計士としての確かな識と経験を買われ、即戦力として採用されたのだ。 そして、そのしい職で、私は驚くべき偶然に直面することになる。
私が担当することになった取引先の企業リストのに、なんとが営業部を務めている会社の名があったのだ。正確には、の会社の請けとして部品を納入している製造会社の経理監査を担当することになった。 まさかこんな形で夫の関連会社と関わることになるとはわず、私は複雑ないを抱きながら帳簿の精査をめた。
だが、類に目を通していくうちに、元会計士としての私の直が警鐘を鳴らした。 (……何かがおかしいわ。この取引、実態が伴っていない……)
特定のコンサルティング名目で毎巨額の資が流しており、その振込先を辿っていくと、が管理するペーパーカンパニーの座へと繋がっていたのだ。 架空発注、リベートの環流、そして裏の造成――数にの類を見たにじた審点の正体が、まさにこれだった。は自の営業部というを悪用し、にわたって組織な背任と横領を繰り返していたのだ。
私は即座に司へ報告し、所内で協議がわれた結果、その取引に関する監査報告が厳格に作成されることとなった。
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(因果応報とは、本当にあるものね……) 自分ので夫の正の証拠を突き止めることになろうとはにもわなかったが、私の胸に罪悪は切なかった。
さらに、問題はそれだけに留まらなかった。 かつて暮らしていた自宅の所にむ、の幼馴染のママ友から、本の切迫した話がかかってきたのだ。 「美咲さん! 変よ! 今、所であなたのお義母さんがとんでもない噂を言いふらして回ってるのよ!」 「え……? 噂って、どんな?」 「それがね、『嫁の美咲が、若い男と浮気して男を作って、君を無理やり連れて財産を持ち逃げした』って、あちこちのに泣きついて言いふらしてるの!」
受話器の向こうからの言葉に、私はいたが塞がらなかった。 (私が男を作って逃げた……? 荷物をに投げ捨てて鍵を閉めたのは、そっちでしょうに!) 義母ののでは、息子が逮捕された屈辱と現実を直できないあまり、都のいい妄と記憶の改ざんがわれているようだった。呆れ果てて言葉を失っていると、隣で話を聞いていたが、ややかな笑みを浮かべてスマートフォンを取りした。
「母さん、そんな奴放っておきなよ。……俺に任せて」 「? 誰に話するの?」 「実はさ、俺のサッカー部の先輩が、父さんの会社の営業部で働いてるんだよ。この、父さんが母さんにしてきたことや、母さんが見つけた正の証拠の話、全部その先輩に相談したんだ」
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「えっ……!?」
は先輩に通話し、スピーカーフォンにした。話から、先輩の緊迫した声が聞こえてくる。 『か! おが教えてくれた報、うちの部とコンプライアンスに伝えたよ。今、社内監査が入って騒ぎになってる。おの父親、警察の捜査だけじゃなくて会社からも事聴取受けることになって、居づらくなったのか今は取って隠れしてるぞ』
警察による傷害事件の捜査、そして会社による横領と背任の内部調査。 は今や、社会に完全に逃げを失い、方塞がりの状態に追い詰められていたのだ。
「母さん、もう慮することなんて何もないよ。全部、終わらせよう」 息子の力い言葉に背を押され、私は庭裁判所へ婚調および慰謝料請求の申してを正式にった。
調の初。どんよりとした曇り空の、庭裁判所のな建物が聳えっていた。
「、本当にあなたまでついてくる必はなかったのに。学のガイダンスの準備もあるでしょう?」 裁判所の正面階段をがりながら私が声をかけると、スーツにを包んだは、頼もしく胸を張って答えた。 「何言ってんだよ。もしあの父親やばあちゃんが母さんに詰め寄ってきたら、誰が母さんを守るんだよ。俺が番くにいてやるよ」 「警備員さんだっているんだから丈夫よ」
そう苦笑しながらも、隣を歩く息子のがどれほど私のを支えてくれていたかれない。