"青い痣と一冊の手帳" 第16話
「あんたのせいで! あんたが警察なんかに余計な告発をしたせいで、私の事なが逮捕されてを塗られたんだよ! 息子の顔にを塗るような罪を犯した嫁を、このに歩でも入れるわけがないだろうが! てけ! 今すぐ消え失せろ!」
「お母さん、落ち着いてください! 話しいを――」 「うるさい、うるさい、うるさい!!」
義母はを塞ぎ、叫びながら玄関のいドアをドスンと激しい音をてて閉め、内側から鍵をガチャリと乱暴に施錠してしまった。 インターホンを鳴らしても、切の応答はない。完全に締めされてしまったのだ。
呆然とち尽くす私の横で、が積みにされた荷物のから、自分の通学用リュックを見つけしてを確認した。 「……とりあえず、俺の制と教科、勉具は全部まとめて放りしてあるわ」 はそう言って、呆れたように苦笑いを浮かべた。
「……あなた、そんな笑ってるじゃないでしょう。母さん、もうどうしたらいいか……」 病みがりの体にどっと疲労が押し寄せ、私は端で崩れ落ちそうになった。 すると、はお腹を抱えてクスクスと本格に笑い始めたのだ。
「だってさ、母さん、あのばあちゃんの顔見た!? 顔真っ赤にして、必に荷物放りしてさ! あんなに元気があるなら、最初から介護なんて全然いらなかったじゃん! 面すぎて腹痛いよ!」
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息子の底抜けにるい笑い声を聞いているうちに、私の胸のにあった絶望が、急速に馬鹿馬鹿しさへと塗り替えられていった。 確かに、の言う通りだった。普段は「が痛い」「腰がい」と騒ぎして私を顎で使っていたが、嫁を追いすためだけにこれだけの労働をでこなしたのだ。その滑稽さに気づいた瞬、私のからも自然と笑いが漏れした。
「ふふっ……本当ね。言われてみれば、とんでもないガッツだわ」
私たちは顔を見わせ、で声をげて笑いった。 がいてくれたからこそ、私は絶望のどん底に突き落とされずに済んだのだ。息子のが、暗を照らす確かなだった。 私たちは乗ってきたタクシーの運転にをげ、トランクと部座席に積めるだけの荷物を積み込み、隣のビジネスホテルへと向かった。
ホテルのに落ち着いた私は、ベッドに腰掛け、これからの未来について真剣に考え始めた。 もう、あのに戻ることは度とない。との婚姻関係を完全に清算し、自分のでをやり直すのだ。
それからの数ヶ、私たちはを向いて激の々を駆け抜けた。 仮まいのウィークリーマンションを借り、私はの受験勉を全力で支えた。庭環境の激変という過酷な状況にもかかわらず、は驚異な集力を発揮し、見事に第志望の国学の経済学部に格を果たしたのだ。
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「……本当によく頑張ったわね……!」 格通を握りしめ、私は涙をボロボロと零した。 「母さんこそ、々変だったのに、毎飯作ってくれてありがとな」 照れくさそうに笑う息子のを、私は胸が詰まるいで撫でた。
だが、傷に浸っているはなかった。 「、お母さんね、まだ絶対にやり遂げなきゃいけないことがあるの」 「……婚と、慰謝料請求だろ?」 「ええ。きっちりケジメをつけてもらうわ」
私はを決して、ある所へと向かった。 それは、かつて会計士としてバリバリ働いていた代にお世話になった、旧の弁護士の事務所だった。事を話し、が記録してくれていたあの詳細なメモ帳と、暴言や暴力の々しい音声が記録されたボイスレコーダーを提した。
弁護士は鏡の奥の目を丸くし、ページを捲りながら嘆の声を漏らした。 「……これは凄いですね。付、、状況が極めて客観かつ克に記録されている。音声データのとも完全に致しています。これほど完璧な証拠が揃っていれば、裁判になってもこちらが圧倒に利ですよ」
弁護士の力い言葉に、私はく堵した。 そして、運命の歯はさらに加速していった。
活の基盤をえるため、私は資格をかして堅の会計事務所への再就職を決めた。