"青い痣と一冊の手帳" 第15話
しばらくして、目を覚ましたが気まずそうにを掻いた。 「……母さん、気がついたんだ」 「……本当に、ありがとうね」 私が涙声で礼を言うと、はフイと照れくさそうに顔を背けた。 「……別に、俺は当たりのことをしただけだよ」 「そんなことない。お母さん、ずっとあなたに助けられてばかりだわ」 「……それなら、いいけどさ」
息子の器用な、だが温かい言葉を聞いた瞬、にわたって私のを縛り付けていたたい鉛のようなプレッシャーが、嘘のように消えっていくのをじた。
私の術の経過は極めて順調だった。 盲腸の切除術から、傷の回復もく、医師から無事に退院の許がりた。
退院のの朝、病に迎えに来てくれたのはだった。 「母さん、迎えに来たよ。荷物、俺が持つから貸して」 「ありがとう、。でも今は曜でしょう? 部活の練習があるんじゃないの?」 私が尋ねると、はし気恥ずかしそうにを擦った。 「ああ……顧問の先に話したらさ、『練習なんかより母親の退院の迎えを優先しろ』って鳴られちゃってさ。先から指示されたんだよ」
そう言ってさく笑う息子の表は、以の刺々しさが嘘のように柔らかくなっていた。 私が倒れて救急搬送されたあのの朝、は「母さんがこのままんでしまうのではないか」
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と本気で恐怖し、凄まじいショックを受けたのだという。その恐怖を乗り越えたことで、息子ので頑なだった反抗期の殻が完全に打ち破られたようだった。 「もう、私そう簡単にはなないわよ」 私が笑って返すと、も「本当だよな」と声をげて笑った。
お世話になった医師や護師にくをげて病院をにする。 へると、初の柔らかな差しがり注ぎ、肌を撫でるがよかった。 「久しぶりのの空気ね……」 「そうだな。腹、まだ痛まない?」 「ええ、丈夫よ」
だが、タクシーの部座席に揺られながら、私の胸の内にはたいが垂れ込めていた。 は警察に逮捕され勾留だとしても、にはあの義母がいるのだ。退院したからといって、元通りの活に戻れば、またあの過酷な事とモラハラの嵐が待っているのではないか。私はさくため息をつき、タクシーの窓のを流れる景をぼんやりと見つめていた。
やがて、タクシーは見慣れた自宅のに到着した。 料を支払おうとしたその、助席側の窓のを見ていたが、怪訝な声をげた。
「……あれ? ばあちゃん、何やってんだ?」
息子の線を追って線を向けると、がの玄関ポーチのに、仁王ちになった義母の姿があった。 病院には度たりとも見いに来なかった義母だ。
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もしかして、息子の逮捕に揺し、私の退院を配して迎えてくれたのだろうか――そんな甘い考えが瞬だけをよぎった。
だが、タクシーがし、自ドアがいた瞬、その淡い期待はをつんざくような絶叫によって々に打ち砕かれた。
「――あんたの帰る所なんて、ここにはもうミリもありゃしないよ!!」
ヒステリックに張りげられた義母の切り声が、宅の通りに響き渡った。 「……え? お、お母さん……?」
私が唖然としてタクシーからりつと、信じがたい景が目にび込んできた。 扉の脇、アスファルトの面のに、私の類や私物、本や用品が詰め込まれた段ボール箱やゴミ袋が、うずく積みにされていたのだ。 (これ……全部、私の荷物……!?)
が逮捕される、あるいは釈放の続きか何かのに、義母とがしてのから運びしたのだろうか。いや、は勾留のはずだ。だとすれば、この膨な量の荷物を、歳になる義母がたったで階から運びろしたというのか。 病みがりので、私はどこか呆気にとられながら、(普段はリモコンつ自分で取れないって騒いでいたくせに、私を追いすためならこれだけの馬鹿力を発揮できるのね……)と、妙なすら覚えてしまった。
だが、今はそんな呑気なことを考えているではなかった。
義母は鬼のような形相で目を吊りげ、唾をばしながら私を指差して喚きてた。