みかん小説
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"青い痣と一冊の手帳" 第14話

盲腸が破裂寸ですので、今から緊急術をいますからね」

医師の落ち着いた声が聞こえた。だが、執刀医や護師たちの線は、私の腹部の炎症だけでなく、私の体全体に向けられていた。 術着に着替えさせられた私の体には、を着ていれば決して見えない所に、無数の打撲痕や鬱血痕――夫であるからにわたって受け続けてきた、暴力と嫌がらせの爪痕がびっしりと刻まれていたのだ。

「……酷いな。これは……」 麻酔薬が血管へと注入され、識がのく直、医師が絶句するように呟いた声がに届いた。 (ああ、見られてしまったんだわ……) 、恥と恐怖から誰にも言えずに隠し続けてきた私の秘密が、すべて暴かれたのだと悟りながら、私はい眠りへと落ちていった。

その来事は、すべてになってから聞かされた。

私がへと運ばれた直、執刀医とは別の担当医が、待にいたを別へと呼びしたのだという。 「お父さんは……どこかへかれたのかな?」 医師が尋ねると、淡に答えた。 「売でお菓子とコーヒーを買い込んで、ロビーで優雅にテレビを見てます」 朝べ損ねて腹を空かせているのは息子のも同じだったというのに、は妻の術のことなど気にも留めず、ロビーで寛いでいたのだ。

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医師は真剣な面持ちで、の目を見つめて問いかけた。 「君、お母さんの体にあった無数のアザについて、何かっていることはないかい? 最庭内で何か異常なことはなかったかな?」

瞬だけ躊躇したという。 だが、目のの医師の真摯な差しを見た、息子は覚悟を決めた。 ポケットから、あのボイスレコーダーと、々の暴力の記録をびっしりとき留めたメモ帳を取りし、すべてを打ちけたのだ。 からに受けていた「偶然を装った暴力」の数々、暴言、そして義母による執拗なモラルハラスメントの全容を。

息子からの証言と詳細な証拠の提を受け、病院側は即座に警察へ通報した。 もなく、病院のロビーにの警察官が姿を現した。 優雅にお菓子を頬張っていたち塞がり、警察帳を提示する。

さんですね?」 「はあ? そうですけど、何ですか急に」 「奥様への傷害および暴の疑いについて、々お話を伺いたい。所までご同願えますか?」 「は、傷害!? 何を言ってるんですか! 俺は何もしてませんよ! 妻が勝に倒れただけだ!」

激しく狼狽し、見苦しく喚きてるの両脇を警察官が固め、そのままパトカーへと連していった。 ロビーの隅でその景を見届けていたは、連されていく父親のろ姿に向かって、満面の笑顔でを振って見送ったそうだ。

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私が麻酔から完全に覚したのは、夕方のことだった。 清潔な病のベッドの、ゆっくりと目をけると、窓際のソファでが静かに寝息をてて眠っていた。 朝からの騒と、警察への証言、そして私の術をで待ち続けた疲労がなったのだろう。普段のがりが消え、幼い頃のような無防備で穏やかな寝顔を見つめていると、おしさと謝で胸がいっぱいになり、自然と涙が溢れた。

コンコン、と控えめなノックの音がして、担当医が病に入ってきた。 医師は私の識が戻ったことを確認すると、優しく微笑み、そして衝撃言をにした。

「美咲さん、術は無事に成功しましたよ。……それから、ご報告があります。先ほど警察から連絡がありましてね。旦さん、正式に傷害容疑で逮捕されましたよ」 「え……逮捕……ですか?」 私は驚きに目を見張った。医師は静かに頷き、眠るの方へと線を向けた。

「息子さんが、とても勇気あるを取ってくれました。彼がにわたって記録していた克なメモと音声データが決定打となりました。あの子はお母さんを救うために、本当に派に闘ってくれましたよ」

涙で滲む界ので、私は眠る息子の寝顔をじっと見つめた。 いつのにか、こんなにも頼もしく、く成してくれていたのだ。

私が守らなければならないとっていた子どもに、私は命ごと救われたのだ。

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