"青い痣と一冊の手帳" 第13話
激痛に耐えながら目をけると、が驚きと苛ちで顔を歪めているのが見えた。普段の傲な仮面がれ、予期せぬ事態に揺しているのが見て取れた。 (あなたでも……そんな抜けな顔ができるのね……) 極限の苦痛ので、私は自嘲気にそうった。
「父さん! 救急呼んでくれ! 母さんの顔が真っ青なんだよ! く!」 が必に叫んだ。 その息子の剣幕に、はようやくに返ったようだったが、すぐにいつもの淡で尊な態度を取り繕った。
「チッ、救急ぁ? こんな朝くからかよ。げさなんだよ。どうせ構ってほしくて倒れたフリして演技してるだけだろ。いつものことじゃないか」
は吐き捨てると、壁の計を見げて眉をひそめた。 「もうすぐ病院の診察だろ。あとも待てば普通にくんだから、そのになってからけばいいんだよ。俺はこれから事な仕事があるんだ。救急なんて呼んで所に騒ぎてられたら、俺の世体が悪くなるだろうが! 、おも学だろ。いいからさっさと着替えて支度しろ!」
酷極まりない言葉の数々。 私はちがろうと腕に力を入れたが、もはや指本かすことができなかった。 その、が私をそっとに寝かせ、ゆっくりとちがった。その背から、静かだが凄まじいりのオーラがちっているのが見えた。
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はの真正面にち塞がり、父親の胸ぐらを掴まんばかりの距まで詰め寄った。
「――父さん、いい加減にしろよ!!」
気を含んだ息子の絶叫が、朝のに轟いた。 「どう見ても普通の痛み方じゃないだろ!! 母さんがどれだけ苦しんでるか、見れば分かるだろ!! 自分の世体と仕事のことしかにないのかよ!!」
普段は数のないの息子が、父親を殺さんばかりの鋭いで睨みつけ、全全霊で抗議している。 その気迫に完全に圧倒されたは、気圧されて半歩ずさりした。息子の背には、倒れ伏す妻を守るという確な志が宿っていた。 は顔を引きつらせ、忌々しそうに激しい舌打ちを鳴らした。
「……チッ、わかったよ! 呼びゃあいいんだろ、呼びゃあ!」
こうして、ようやく119番への通報がわれたのだった。
通報から数分、のい準備のおかげで、到着した救急隊員によって私は迅速にストレッチャーへと乗せられた。 義母は寝巻きのにカーディガンを羽織り、玄関先でおろおろとを揉みながら、 「、何か分かったらすぐに連絡してちょうだいね! 美咲さん、余計なおをかけないでね!」 と頓珍漢な声をかけていた。
救急のには、私と共にとが乗り込んだ。 揺れる内でも、は腕を組み、 「ったく、朝から事な会議があるってのに……ツイてねえな」
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と声でブツブツと文句を垂れ流していた。 その無神経な態度にの限界を迎えたのか、隣に座っていたが、の脇腹を肘でい切り突いた。「痛ぇな、何すんだよ!」と睨みつけるを、は軽蔑に満ちた絶対零度の瞳で瞥し、完全に無した。
「救急隊員の川です。美咲さん、聞こえますか? 状態を確認しますね」 隊員が血圧を測り、脈を取り、そして腹部の状態を確認するために私のの裾をめくりげた。
その瞬だった。隊員のきが完全に止まった。 めくられたの、私の腹部や胸元、太ももにかけてわになった皮膚を見て、隊員の表が凍りついた。
「――これは……病院だけじゃねえな。……警察だ」
い、だが決定な声だった。 「……え?」 のの抜けた声が内に響いた。も息を呑んで隊員を見つめている。 隊員は即座に無線をに取り、緊迫した声で通信を始した。
「こちら現救急隊。警察への臨請をお願いします。傷病者の体各所に、数の陳旧性および鮮な皮血痕――な傷痕を確認。至急、所轄への連絡を」
窓のを流れる朝の並みをぼんやりと見つめながら、私の識はそこでぷつりと途切れた。
次に目が覚めた、私の腔を刺激したのは、ツンとした消毒液の匂いだった。 界に映ったのは、無質な術の丸い井灯。
「美咲さん、分かりますか? 急性虫垂炎を起こしています。