"青い痣と一冊の手帳" 第11話
息子は、見ていたのだ。 私が必に隠し、誰にもられないように平静を装っていたすべての虐待と暴力を、この子は全部っていたのだ。
「あんまりにも父さんもばあちゃんも酷いからさ……部活の顧問の先に相談したんだ」 「顧問の……先に?」 「うん。母さん、ずっと隠そうとしてたけど、腕とかとか、アザだらけだったじゃん。で隠してたって、俺には全部見えてたよ」
息子の真っ直ぐな線が痛いほど突き刺さる。 「そ、それは……お母さんがおっちょこちょいで、あちこち具にぶつけちゃっただけで……」 慌てて取り繕おうとする私の声は、自然に裏返っていた。みっともない嘘だった。の澄んだ瞳を、まともに見つめることができない。
「嘘つくなよ。ってたよ、ずっと」 はしだけ元を歪め、力く頷いた。 「顧問の先が言ってくれたんだ。『そういう湿な暴力やモラハラに対して、に鳴り返してもはない。最に自分を守り、相を追い詰めるのは確実な証拠だけだ』って。だからずっと、役につとって記録しといたんだ。そのボイスレコーダーも、先が貸してくれたものだよ」
は私の震えるを両で包み込み、ボイスレコーダーを握らせた。 「今度からは、母さん自がやられたこと、言われたことをこれに記録していくんだ。
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絶対、泣き寝入りなんかしちゃダメだ」
目のにいる息子が、いつのにこれほどまでにきく、逞しく成していたのだろうか。 私は涙が溢れそうになるのを必に堪えながら、胸の奥でいものが込みげるのをじていた。 (私の育て方は、違っていなかった……この子は、ちゃんと真っ直ぐに、の痛みが分かる優しい子に育ってくれていたんだ……)
い返せば、の私に対する暴力な言は、結婚当初から常にしていた。 が幼い頃、をして寝込めば、「おの管理が悪いからだ」と罵倒された。が学のテストで悪い点を取れば、「おの来損ないのに似たんだな」と嘲笑された。 そして何より恐ろしかったのは、庭内でわれる「偶然を装った暴力」だった。
私がキッチンで夕の支度をしている最、蔵庫に物を取りに来たついでとばかりに、がわざとい力で肩や肘をぶつけてくるのだ。 「痛っ……!」 わず声をげると、は嘲笑を浮かべながらこう言った。 「あ? おがフラフラ邪魔なところに突っってるからだろ。目障りなんだよ」 そう言って、すれ違うたびにわざと体当たりを繰り返してくる。まるで玩具を痛めつけて楽しむ子どものような歪んだ笑顔で。
当、リビングで器を片付けていたは、その様子を無言のままじっと見つめていた。
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にしたお椀を握りしめる息子の拳が、りでプルプルと震えていたのを覚えている。
「さすがにくぶつかりすぎよ。痛いからやめてってば」 私が耐えかねて抗議すると、は瞬で顔を険しく歪め、威嚇するように凄んだ。 「あぁん? 何言ってんだよ。夫婦のスキンシップだろうが! スキンシップにケチつける気か!?」
何がスキンシップなものか。それはただの卑劣な暴力であり、支配の誇示に過ぎない。 そのだった。ずっと黙ってそのやり取りを見ていたが、ガタッと激しい音をてて子からちがった。 「……俺、ちょっとコンビニってくる」 「え? 、もうすぐご飯ができるわよ?」 「いい。……どうせ、このの飯はいからな」
は吐き捨てるように言うと、玄関へと向かった。 は息子の背に向かって「おい! 親に向かって何だその態度は!」と鳴り散らしていたが、は振り返りもしないまま、激しい音をててドアを閉めてていってしまった。 私は息子のたい言葉に傷つき、台所でち尽くしていた。
だが、それから数分。 エプロンのポケットに入れていた私のスマートフォンが、ピロンとさな通音を鳴らした。 画面をくと、からのLINEだった。
『母さん、丈夫? さっきの、すごくくぶつかられてただろ。腕、腫れてない?』 『もし痛むなら、曜にでも学の保健の先に相談してみるよ。
部活の顧問の先も、困ったことがあればいつでも話を聞くって言ってくれてるから。