みかん小説
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"青い痣と一冊の手帳" 第4話

鳴り散らし、元のクッションを乱暴にソファへ投げつけて自分の部へ閉じこもってしまった。バタンと激しい音をてて閉まるドアを見つめながら、私はち尽くすしかなかった。 言質問すれば、倍のトゲを含んだ拒絶となって返ってくる。 次第に、私は息子に声をかけることすら億劫になり、腫れ物に触るかのような態度で接するようになってしまっていた。

(もうしばらくの辛抱よ。受験が終わって学すれば、きっとまた元に戻るはず……) そう自分に言い聞かせて何が過ぎただろうか。まるで自分の力で勝きくなったような態度を取る息子の背を見送りながら、私はくため息をつき、と汗にまみれたユニフォームやジャージを洗いする。 すると、そこへたいみにきたが、すれ違いざまに骨な嫌悪を顔に浮かべて吐き捨てるのだ。

「汚ねえな。おい、そんなまみれの、俺のワイシャツと緒に洗うんじゃないぞ。汚れが移ったらどうすんだ」 「……いつも別々に分けて洗ってるわよ」 「答えすんな。言われなくても徹底しろって言ってんだよ」

なぜ、このの男たちは、言何かをにするたびに棘を含んだ文句しかてこないのだろうか。 言い返せばに油を注ぐことになり、声が何倍にもなってね返ってくることは分かりきっている。

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だから私は、ただ唇を噛み締め、俯いてさく頷くだけになる。 いつしか、夫婦のの会話もその程度のものへと成りがっていた。

決して、最初から毎殴りいの喧嘩をしていたわけではない。ただ、の交わしいが完全に消滅してしまったのだ。 夫婦を続けていると、相に対するや期待がしずつすり減り、最には無という名の防壁を築くようになる。特にのように、妻に対して謝の言葉にせず、何をしてもらってもそれが当然だという顔をしてふんぞり返っている男を相にしていれば、が麻痺していくのも当然だった。 私はただ、自分のを押し殺し、事という終わりのない作業を械のように淡々とこなす々を送っていた。

だが、そんな滞したたい々に、突然の激変が訪れた。

優しいだった義父が、急病で倒れたのだ。 自宅のリビングで突然識を失って倒れ、異変に気づいた所のがすぐに救急を呼んでくれたという。だが、発見されたにはすでに止の状態であり、病院へ搬送されたものの、蘇措置の甲斐なくそのまま息を引き取ってしまった。 あまりにも突然の来事だった。病院から義母の取り乱した連絡を受け、私とが駆けつけたには、義父はすでに病院のにある霊たいストレッチャーのに横たわっていた。

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いシーツの傍らで、義母の(ゆきえ)は激しく取り乱していた。 になって義母は「あののことはショックすぎて何も覚えていない」と語っていたが、それも無理はない。義母の憔悴ぶりは凄まじいものだった。 「お父さん! 嘘でしょう、お父さん! 急にいなくなるなんて、私はこれからどうやってきていけばいいのよぉ!」 たくなった義父の骸にしがみつき、髪を振り乱して声で泣き叫ぶ義母。その異様な景に、部へ案内された私とは、かけるべき言葉も見つからずそのちすくむことしかできなかった。 は義母の震える肩にを置き、自らも粒の涙をボロボロと零していた。にとって、義父は絶対であり、がらないでもあったのだ。 本当に穏やかで、誰に対しても気配りを忘れない派な義父だった。私も目を忍んで、壁際でハンカチを目元に押し当て、静かに涙を流した。

そのの通夜と葬儀の席で、私はある景を目にして驚きを隠せなかった。 の息子、が、祭壇の遺目を憚らず粒の涙を流して号泣していたのだ。 普段は誰に対してもドライで、祖父母に対しても素っ気ない態度ばかり取っていたが、声を震わせて泣いている。息子のそんな姿を私は見たことがなかった。

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