"廃線の駅で待ち続けた父" 第13話
「だけど……昭の、この青駅の改札まで来た、俺は恐ろしくなった」
健は自らの両腕を抱きしめ、激しく震えた。
「源吉さんが、改札の向こうで待っているのが見えたんだ。痩せ細って、ボロボロの着物を着て、息子の帰りをじっと待っている父親の姿が見えた。……そのに、『俺があなたの息子を撲殺しました』なんて言えるわけがない! 言えるはずがなかったんだ!!」
だから、は鞄を捨てて逃げた。 名乗りることもできず、ぬこともできず、ただ鉄所のい鉄を削ることで、自らのを痛めつけ、罪を償おうとしてきたのだ。
「俺は……きてちゃいけないだったんだ。修さんの代わりに、俺が川の底に沈めばよかったんだ……!」
健はたいのに額を擦り付け、獣のように慟哭した。 、胸を焼き尽くし続けた獄の告。 それを聞き終えた、駅の梨も、柴田も、誰も言も発することができなかった。あまりにもく、あまりにも救いのない昭の傷跡が、目のに横たわっていたからだ。
しかし――。
その静寂を破ったのは、を踏みしめる、サクッ、サクッという乾いた音だった。 本源吉が、ゆっくりと、歩み寄ってきたのだ。
老は健のにつと、膝を折り、のに直接腰をろした。 そして、と血で汚れた健の両を、自らの節くれだった、温かいの平で包み込んだ。
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「……健よ」
源吉の声は、議なほど穏やかだった。
「おさんは……本当に、馬鹿な子じゃなあ」
健が息を呑み、涙に濡れた顔をげた。 老の瞳には、りも、みも、絶望のもなかった。 そこにあったのは、すべてを包み込むような、底れぬ慈のだけだった。
「源吉さん……? 俺が……俺が修さんを……!」
「っとったよ」
源吉のからたその言に、そのにいた全員の呼吸が止まった。
「……え?」
健の唇が、信じられないものを見るように半きになった。
「って……いた……?」
「ああ。っとった」 源吉は優しく頷いた。その掌が、健のえ切った指先を、しずつ温めていく。
「昭のあのの。おさんが駅のゴミ箱の裏に鞄を隠して逃げていった、わしはその鞄を掘りした。……そして、へ持ち帰って、仏壇ので、でをけたんじゃ」
源吉は目を細め、いあのをいすように語り始めた。
「には、修のと、あの種袋と、そして……血のついたあのが入っとった。裏にかれた、おさんの震える文字も、わしは文字残らず読んだよ」
「な……なら、なぜ……!」 健の声が裏返った。 「なぜ俺を警察に突きさなかったんだ! なぜ俺を探して、仇を討とうとしなかったんだ! 俺は殺しだぞ! あんたの最の息子を殺した犯なんだぞ!!」
「修がな、教えてくれたんじゃよ」
源吉はの表側――息子の遺を指差した。
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「このの文字を見てみい。『私はこの子と共にきるを選びました』といてある。……修はな、おさんにを打たれたで、このをいたんじゃ」
はハッと息を呑んだ。 便箋を取りげ、にかざして確認する。 表の文字と、裏の文字。 裏面の健の文字には血がび散っているが、表面の修の文字は、その血痕のに、からねてかれていたのだ。
「修は……ぬ際、識がのくで、おさんが絶望して裏にき殴った文字を読んだんじゃろう」 源吉の目から、粒の涙が零れ落ち、老いた頬を伝った。 「そして、最の力を振り絞って、表にあの言葉を残したんじゃ。『この子を連れて帰る』と。……それが何をするか、親のわしに分からんはずがなかろうが」
源吉は健の肩を抱き寄せ、その背を力く叩いた。
「修はな、おさんを庇ったことを、ぬ瞬まで誇りにっとったんじゃよ! 『おが殺したんじゃない、俺がおを守ったんだ』と、命懸けで伝えたかったんじゃ! それを……おさんがもで抱え込んで、殺しじゃと自分を責め続けて……そんなことのために、修はんだんじゃないわい!!」
老の号のような叫びが、のホームに響き渡った。 それは、者からの真実のメッセージであり、止まっていたをかす、絶対の赦しの言葉だった。
「う……あああああああっ……!」