"12人の子を育てた母の墓から蛇が出た――納骨室を開けると、知らない骨壺が重ねられていた" 第3話
台帳にない納骨
寺の応接には、3冊の帳面が並べられていた。
墓使用者の名簿、納骨の受付簿、材の作業記録。母がくなったから現まで、森川の欄に記されていた名は1だけだった。
森川澄。
3の納骨、ち会った族、担当した材。そのの追記はない。
「別のを納骨した記録は、本当にないんですね」
「ありません」
職は老鏡をし、帳面を私のへ向けた。
「この墓では、納骨に寺へ届けてもらいます。ご遺骨を勝に置くことはできません。材が墓をけたも、作業をここに残します」
の担当窓にも確認していたが、森川の墓に関する改葬やたな埋蔵の申請は見つからなかったという。
私は母の欄を指で追った。でかれた名の横に、3の付がある。それだけだった。
母の納骨には、きょうだい12のうち10がち会っていた。誰か1の記憶違いで、別の骨壺が増える余はない。帳面の空は、族の誰も承していない何かが墓のにある能性を示していた。
「物が入り込んでがずれただけ、という能性は?」
「亀裂だけならあり得ます。しかし、具の跡と塗り直した目があります。ご族が依頼していないなら、確認は必です」
職は、正式に納骨をけて内部を点検するよう勧めた。
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墓管理者、墓の使用者、材がち会い、作業を撮する。異物や見覚えのない遺骨が見つかったは、そのでかさず関係関へ連絡する。
「けるに、森川の皆さんへ説してください。から聞いていないがると、確認作業そのものが争いになります」
職は同の見本を差しした。使用者である父の署名に加え、ち会う親族の氏名と連絡先をく欄がある。単なる墓参りではない。母の眠る所を、もう度くための類だった。
順を聞くほど、胸の奥がくなった。
何もなければいい。しかし何もなければ、誰かが母の墓をけ、また閉じた理由が分からないまま残る。
寺をるに、私は父へ話した。
「記録には、母さんしか載っていなかった。がずれた原因を調べるために、を確認したい」
父は黙って聞いていた。
「けろ」
「弟たちにも話してからにする」
「12もいれば、12通りのことを言う。だが墓のにいる母さんは、自分で確かめられん」
父の声はかったが、言葉は瞭だった。
「俺が使用者だ。必な類には署名する」
その夜、私はきょうだい12の連絡グループに、写真と確認結果を送った。
反応はすぐに返ってきた。
〈蛇の巣じゃないの?〉
〈母さんの墓をけるなんて嫌だ〉
〈もしが荒らされていたら、警察に連絡すべきだ〉
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〈父さんが何か忘れている能性はない?〉
母がくなったあと、12のきょうだいは同じしみを抱えたつもりでいた。しかし実際には、母の遺品を残したい者と処分したい者、父を実で支えたい者と施設を勧める者に分かれた。墓をけるという話は、そのとき押し込めた満まで引きずりした。
私は返信欄に推測をかなかった。分かっている事実だけを箇条きにし、翌週までに全員で話したいと送った。
通が続く、女の恵から話が来た。
「お兄ちゃん。私、葬儀の2かに墓参りへったの。そのとき、らない女のが母さんの墓のにいた」
「どんなだった?」
「ろ姿しか見てない。でも、母さんの名を呼びながら泣いていた」
「声に覚えは?」
恵はしばらく考えたあと、い声で答えた。
「静子おばさんに、似ていた気がする」