"搭乗直前、警察犬が機長に飛びかかった――10時32分、空港全便が止まった理由" 第3話
空だったバッグ
再検査でも結果は変わらなかった。
爆発物処理班は黒川のバッグを遮蔽容器ので封した。瀬たちは隣の映像で確認する。
から順番に取りされたのは、217便の運航資料、会社支のタブレット、予備の鏡、常備薬、のボールペン。内ポケットには、妻と学の娘が写ったさな写真が入っていた。
起爆装置も、薬も、配線もない。
戸はすぐに子からった。
「見たでしょう。何も入っていない。側に付着した程度なら、どこかで偶然触れただけかもしれない」
処理班員は首を振った。
「成分はファスナー付に集しています。量は微量ですが、単なるやすりからの次付着とは分布が違います。誰かが図に付けた能性を排除できません」
バッグのが空だったことで、黒川の疑いがれたわけではなかった。むしろ、目が分からなくなった。
もし黒川自が何かを運ぶつもりなら、側だけを汚染する理由がない。反対に、誰かが彼を陥れたいのなら、なぜ肝の装置を入れなかったのか。瀬は、空のバッグそのものが別の所へ目を向けさせないための仕掛けではないかと考えた。
瀬は黒川に今朝のを系列で尋ねた。
黒川は752分に職員入を通り、810分から運航打ちわせ、846分に体確認、912分に組休息へ入った。
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そのはフライトバッグを持ったまま乗員通へ来たという。
「本当に、度も放していませんか」
「休息では隣の子に置いた。だが、私はずっと同じ部にいた」
「誰かと話しましたか」
「運航管理から類の訂正を頼まれた。入の記入台までったが、数歩だ。バッグは見える位置にあったとう」
“う”という言葉をにした、黒川は黙った。瀬は責めず、ち位置と刻だけをき留めた。記憶が曖昧な部分ほど、監映像と照する価値がある。
黒川の声には、先ほどまでとは違うさがあった。自分の記憶のに、らない穴があることに気づき始めていた。
副操縦士が別から連絡を入れてきた。黒川がされたでもべるよう準備を命じられたが、自分は体の再点検なしには引き受けられないという。
「黒川は、理由なくを止めるではありません。だからこそ、理由なくばすでもありません」
その言葉を聞いた黒川は何も答えず、子を膝のへ置いた。
戸は運航管理と話をつなぎ、副操縦士をへ昇格させ、別の副操縦士を配する話をめていた。
「黒川をせば、217便はばせます。バッグも隔した。乗客をこれ以待たせる理由はないでしょう」
野は返事をせず、瀬を見た。
瀬にも、バッグだけが汚染源なら体まで止め続ける根拠はいと分かっていた。
それでも、ひとつ引っかかっていた。
なぜ犯は、爆発物を入れずに臭いだけを残したのか。
を搭乗に止めるためなのか。それとも、事故が起きた、黒川を疑わせるためなのか。
瀬が考えていると、休ませていたハヤテが突然ちがった。
をくげ、空調の流れを確かめるように首をかす。次いで、閉鎖の搭乗へ向かってくリードを引いた。
「ハヤテ」
瀬が制御すると、犬は止まった。しかし線は黒川のバッグではなく、ガラスの向こうの駐へ向いている。
そこには、い体を朝でらせた217号があった。
ハヤテはくを鳴らし、搭乗の入で再び伏せた。
2度目の確定作だった。