"搭乗直前、警察犬が機長に飛びかかった――10時32分、空港全便が止まった理由" 第2話
発を止める6分
944分。217便の搭乗始予定まで、あと6分。
乗員専用通は黄い規制帯で閉じられ、黒川のフライトバッグだけがいの央に残されていた。瀬はハヤテを通のへげ、野織が用させた別へ黒川を案内した。
規制帯のには、すでに航空の職員が集まっていた。誰も声では話さないが、線だけがのバッグへ向く。黒川がそこを通ると、若い備士が反射にを空けた。そのさな作に、黒川の眉がわずかにいた。
「爆発物処理班の到着まで、搭乗を閉鎖します」
野は空港運用管理の当直責任者だった。端末をき、217便の搭乗保留を入力する。その隣で、航空の戸運航部が険しい声をげた。
「バッグのは会社のタブレットと類です。黒川本がけると言っている。なぜ、そこまでげさにするんです」
「が全だと確認できていないからです」
瀬が答えると、戸は腕計を突きつけるように見せた。
「217便には168が乗る。1015分にられなければ、羽田からの折り返し便まで遅れる。犬がし騒いだだけで、何百に迷惑をかけるつもりですか」
ハヤテは瀬の脚に沿って座り、通の奥を見ていた。
瀬は声を荒らげなかった。
「ハヤテは騒いでいません。爆発物臭を検したの確定作をしました。
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私の判断だけでを止めることはできませんが、確認に通すこともできません」
野警部から無線が入った。局所封鎖を維持し、爆発物処理班による初検査をう。空港危対策を招集し、対象物の汚染範囲が判するまで217便の搭乗を止する――正式な指示だった。
搭乗では、案内表示が「搭乗続き」から「保確認」に変わった。待っていた乗客から斉に声ががる。ベビーカーを押す母親が係員に事を尋ね、張客が何度も計を見る。
窓側の席には、修学旅らしいの団もいた。引率教員が徒を座らせ直し、係員の説を待っている。168という数字は運航表のではない。ずつ、ここから別の活へ向かうだった。
野は羽田側の駐枠、乗員の勤務、接続便への響を画面で確認した。10分の遅れが、そのまま10分で終わるとは限らない。それでも彼女は搭乗保留を解除しなかった。
別の黒川は、ガラス越しにその様子を見ていた。
「私のせいだとわれる」
「現点では説できることがありません」
野の返答に、黒川は唇を結んだ。りよりも、乗客を残して操縦席からされたことへの焦りが見えた。
黒川は窓に映る自分の制を見た。30く、これを着ての命を預かってきた。ところが今は、その制のせいで「が危険物を持ち込んだ」
という疑いが、説より先に広がっていく。
「検査には全面に協力します。ただ、事実がるに乗務員へ余計な報を流さないでください」
悔しさをのみ込んだ請だった。野はくうなずき、連絡範囲を危対応員に限定した。
やがて、防護装備を着けた処理班員が通へ入った。バッグをかさず、側の持ち、底、ファスナー周辺から専用の布で試料を採取する。
簡易分析器がい作音を続けた。
10秒。
20秒。
戸が苛ったように息を吐いた直、表示部のが変わった。
緑ではなかった。
赤い警告灯が点灯し、処理班員が無線を取る。
「対象バッグ側から、爆発物由来成分の反応。再検査に入ります」
黒川はガラスの向こうで、の点を見つめた。
瀬の元では、ハヤテだけがかなかった。