"「和裁しかできない」嫁と20億円の着物" 第11話
達也は静かに息を吐いた。
「母さんは最まで君たちを待っていた。でも、君たちは1度も来なかった」
い沈黙が話の向こうとこちらを支配する。
のに、計の秒針の音だけが響いていた。
達也がをく。
「だから、俺たちは援助しない」
達也の声は静かだったが、確固たる志を帯びていた。
「これは母さんの遺志だとっている」
恵子が何かを言いかけた。
しかし言葉がてこないようだ。
達也は最の言葉を投げる。
「君たちにはそれぞれのがある。自分たちでなんとかしてください」
達也はそう言って話を切った。
受話器を置くと、いため息をつく。
はそっと達也のに触れた。
達也がに向かって言う。
「これで良かったんだよね」
達也の目には涙が滲んでいた。
は静かに頷く。
「はい」
2はしばらく黙ってっていた。
窓のではの夕が沈んでいく。
川越の町がオレンジに染まっていた。
それから数、男の妻の彩子からも話があった。
同じように助けを求める内容である。
男も会社の事業失敗できな損失をしたそうだ。
彩子の商社も事業の撤退でリストラが始まった。
2とも経済に困窮しているとのことだった。
だが達也は同じように答えた。
静かに、しかし毅然とした態度で援助を断ったのだ。
彩子も最には泣きながら話を切った。
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その夜、と達也はで向かいって座った。
お茶をみながら2は静かに語りう。
達也がつぶやく。
「これで良かったのかな」
は静かに答えた。
「お母さんなら、きっとこうされたといます」
達也は頷く。
「母さんはを見る目があった」
達也は湯呑みを見つめる。
「誰が本物で誰が偽物か、ちゃんと分かっていたんだ」
2のに温かい沈黙が流れる。
枝のがまだそこにあるような気がした。
窓のではの虫が鳴いている。
静かな夜だった。
は若の着物が入った桐の箱をそっと撫でる。
そのに枝のが詰まっている。
そして本当の族の絆が、確かにしているのだ。
達也がちがった。
「からまた普通の活だ」
も頷いてちがる。
2はのかりを消した。
静かな夜の、2のが寄り添って歩いていく。
しい秩序が確された。
そこには過の痛みも裏切りも、もうしない。
ただ本当に切なものだけが残されたのだ。
は静かに寝の戸を閉めた。
株券を発見してから10が経った。
は今で56歳になる。
は川越で最も評判の良い裁としてられるようになった。
には若い弟子が5いる。
皆、の丁寧な指導を慕って方から通ってきていた。
枝が築いた伝統が、確実に次の世代へ受け継がれている。
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は資産の半分を児童福祉団体へ寄付した。
約10億円である。
これは枝の遺志を継ぐためだった。
枝は、よくに言っていた。
『本当に困っているを助けなければいけない』
その言葉をは忘れていない。
寄付は貧困の子供たちの教育支援に使われている。
毎何もの子供たちが、その支援で学に通えるようになった。
次男や男への援助は、最限にとどめた。
活費の部だけを毎送している。
それ以のことはしなかった。
2とも今はに働いているそうだ。
恵子はさなパートで働き始めた。
彩子も派遣社員として再発している。
と達也のもとに、彼らからの連絡はほとんどない。
たまに簡単な礼状が届く程度である。
それで分だった。
と達也にはしい挑戦があった。
2とも50代で学へ入学したのだ。
は通信制の学で本文化を学んでいる。
裁の技術だけでなく、その歴史やをく理解したいとったからだ。
達也は元の学で社会福祉を勉し始めた。
週に1度、2は緒に図館へく。
机を並べてレポートをく姿は、まるで学のようだった。
達也が笑いながら言う。
「こんなになって勉するなんてわなかったな」
も微笑んで答えた。
「でも、楽しいですね」
枝が見たかった自する族の形である。
おに振り回されず、自分たちの志できる。
それを2は証しようとしていた。