"「和裁しかできない」嫁と20億円の着物" 第9話
は頷く。
「はい。襟の裏に隠されていました」
達也は株券を1枚1枚確認していく。
そのも激しく震えていた。
達也の声がかすれる。
「これ、本物だ」
達也はスマートフォンを取りした。
「しかもこの会社、今すごく株価ががってる」
画面を見つめる目がきく見かれる。
達也の声がさらに震えた。
「、これ……」
達也はの顔を見た。
「現の価値で、約20億円だ」
は言葉を失った。
20億円。
その数字が現実のものとはえない。
部のが静まり返った。
窓のから鳥のさえずりが聞こえてくる。
しかし2には何も聞こえなかった。
達也は株券を握りしめてに座り込む。
達也の声は震えていた。
「母さん、本当にに託したんだ」
達也は株券を見つめる。
「僕じゃなくて、おに」
もそのに座り込んだ。
膝の力が抜けていく。
枝の顔が目のに浮かんだ。
あの優しい笑顔。
最に言ってくれた言葉。
『ちゃんは、私の本当の娘だって』
全てが繋がっていく。
枝は最初から全てを計画していたのだ。
財産をNPOに寄付すると言ったのも嘘ではなかった。
おそらく現や産は本当に寄付したのだろう。
ところが、この株券だけはのために残してくれたのだ。
次男と男には何も残さなかった。
恵子と彩子にも。
彼らは最初から母を見捨てたからだ。
はそののことをいした。
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相続の続きをしたのことである。
次男と男は、すぐに相続放棄の類にサインをした。
何も残っていないとって、あっさりと権利を放棄したのだ。
次男が類にハンコを押しながら言った。
「どうせ何もないんだから」
つまり彼らは、もうこの株券を受け取る権利がないのだ。
法に完全に放棄してしまったのである。
は複雑な気持ちで株券を見つめた。
嬉しいというと戸惑いが混ざりっている。
枝は全てを見抜いていたのだ。
誰が本当に自分を切にしてくれたのか。
誰がおのためにづいてきたのか。
そして最の最に、本当のを示してくれた。
達也がのを握る。
「母さんは、おが番信頼できるとったんだ」
は涙が溢れてきた。
しかし、今度の涙はしみだけではない。
謝と堵、そしてい敬が込められていた。
達也が静さを取り戻してをく。
「でも、これは実物株だから」
達也はスマートフォンを操作する。
「2009に株券子化が義務づけられたから、すぐに専に相談して子化の続きをしないと」
は頷いた。
達也はすぐに証券会社と弁護士に連絡を取り始める。
数週の続きを経て、株券は正式に子化され、相続が完した。
全てが法にのものとなったのだ。
若の着物が畳ので静かにっている。
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その美しさの裏に、枝のいが隠されていたのだ。
は着物を胸に抱いた。
枝のぬくもりがまだそこに残っているような気がする。
窓のでは初のが吹いている。
緑の葉が優しく揺れていた。
達也が静かに言う。
「次男たちには、言わない方がいい」
は頷いた。
彼らにられる必はない。
これはと枝だけの秘密である。
そして達也もまた、母の選択を尊しようとしていた。
自分が相続であるにも関わらず、母が選んだを優先したいとっているのだ。
は改めて株券の記録を見つめた。
枝は1枚1枚丁寧に選んで、この封筒に入れたのだろう。
そして誰にも気づかれないように、着物の襟に縫い込んだのだ。
最の技術を持つ裁職だからこそできた仕事だった。
の胸に温かいものが広がっていく。
自分は馬鹿にされ続けてきた。
裁しかできないだとあざ笑われてきた。
だが枝だけは違っていたのだ。
本当の価値を見抜いてくれていた。
部のに静寂が戻ってくる。
達也とはただ黙って座っていた。
言葉は必なかった。
2とも枝のいをく理解していたからだ。
若の着物がので映えている。
その美しさは何にも代えがたいものだった。
は着物を桐の箱に静かに戻した。
株券を発見してから5が経った。
は51歳になった。
今もで裁の仕事を続けている。
しかし以とは違う穏やかさが、その活にはあった。