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"「和裁しかできない」嫁と20億円の着物" 第5話

達也は自分の仕事で精杯だった。

会社でも責任のあるで休むことが難しい。

週末だけは病院へ来てくれたが、平が1で対応した。

の体は限界にづいていた。

トイレの鏡を見ると、自分の顔が驚くほど痩せている。

目のにはいクマができていた。

そんなあるの夜、の携帯話が鳴った。

画面には恵子の名が表示されている。

珍しいことだった。

は廊話にた。

「もしもし」

恵子の声が聞こえてくる。

さん、お疲れ様です。お母さん変なんですね」

その声は表面配しているように聞こえた。

しかしどこかたい響きがある。

は疲れた声で答えた。

「はい。でもしずつ良くなってくれればと……」

恵子がを置いてから続ける。

「ところでさん、聞きましたか?」

は携帯話を握り直した。

「お母さん、全財産をNPOに寄付したらしいですよ」

瞬言葉を失った。

話の向こうから、恵子の笑い声が聞こえてくる。

恵子は声のトーンをげた。

「病気になるに、公正証遺言を作っていたんですって」

恵子はあざ笑うように続ける。

「財産は全部福祉団体に寄付するって」

が震えた。

携帯話を持つに力が入らない。

恵子の声にはらかな嘲りが含まれていた。

「兄嫁さん、本当に損な役回りですね」

恵子はさらに言葉をぶつける。

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「必で介護して、おも使って。でも最には何も残らないなんて」

その言葉がの胸に突き刺さった。

それでも何も言い返すことができない。

恵子はたく笑う。

「私たち、最初から分かってたんです。だから、わざわざを使わなかったんですよ」

恵子はさく笑い声をてた。

「じゃあこれからも頑張ってくださいね」

恵子は息つく。

「私たちは忙しいので失礼します」

話がに切れた。

は携帯話を握ったまま、廊ち尽くした。

からは枝の寝息が聞こえている。

窓のはもう真っ暗だった。

の蛍灯だけがたくっている。

は壁に背を預けて座り込んだ。

の力が抜けていく。

財産のことなど考えたこともなかった。

ただ目ので苦しんでいる枝を助けたい。

そのでここまでやってきたのだ。

だが周りのたちは違っていた。

最初から損得勘定でいていたのだ。

そしてのことを愚かなだと笑っていた。

涙が頬を伝って落ちていく。

は声をさないようにを抑えた。

枝を起こしてはいけない。

病院の廊は静まり返っている。

くでナースステーションの話し声が聞こえた。

は1だった。

誰も方はいない。

夫の達也は仕事で精杯だ。

弟たちは最初から逃げていた。

弟嫁たちはをあざ笑っている。

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それでも、は病院へ来るだろう。

枝の世話を続けるだろう。

なぜなら、それしかできないからだ。

裁しかできない

そう言われた自分には、これしかがないのだ。

窓のでは町のかりがく輝いていた。

しかしそのには届かない。

で、はただ1膝を抱えて座っていた。

誰にも見られることのないその姿は、あまりにもさく見えた。

はゆっくりとがり、病へ戻っていった。

枝の容態が急速に悪化したのは、まった頃だった。

抗がん剤治療ももう効果がない。

医師から余命はくないと告げられた。

は毎で過ごすようになる。

の仕事はほとんどにつかない。

達也が配そうにの肩にを置いた。

しは休んだ方がいい。体を壊すぞ」

だがは首を横に振った。

枝のそばにいなければ悔すると分かっていたからだ。

あるの午、次男の嫁の恵子から話があった。

珍しく病院へくというのだ。

しだけ期待した。

もしかしたら、を入れ替えてくれたのかもしれない。

1、恵子が病に現れた。

きちんとしたスーツ姿である。

ところが、その表には温かさがない。

恵子はベッドの枝に向かって軽くげた。

「お母さん、お久しぶりです」

枝は目をけることもできない。

ただ細い呼吸を繰り返しているだけである。

恵子は病を見回した。

その線がに向けられる。

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