"「和裁しかできない」嫁と20億円の着物" 第4話
笑顔で相槌を打ち、謝の言葉を繰り返す。
はお茶碗を持つが震えそうになった。
それでも必にそれを抑える。
枝にこの2の本性をられるわけにはいかない。
30分ほどして、恵子たちは部をた。
玄関で靴を履きながら、また丁寧にお辞儀をする。
恵子が枝に向かって笑いかけた。
「それではお母さん、また来ます」
彩子もに向かってをげる。
「さんも、お体に気をつけてくださいね」
表面は完璧な義理の娘たちである。
だがに向けられる線は、やはりたいものだった。
2が扉をけてへてく。
2の姿が見えなくなると、枝が満そうにを見た。
「良い子たちでしょう。ちゃんと謝してくれて」
は何も答えられなかった。
たださく頷くことしかできない。
はの方へ線を向けた。
その夜、の片付けをしながらは1で考え込んだ。
あの2の言葉がので何度も繰り返される。
裁しかできない。
古臭い覚。
センスがない。
どの言葉ものをく傷つけた。
自分が積みげてきたものが、全て否定されたような気がする。
は窓のを見つめた。
夕暮れの空がに染まっている。
の格子戸からたいが吹き込んできた。
は針箱を閉じながらった。
これは単なる好みの違いではない。
何かもっといものがあるような気がした。
広告
しかしそれが何なのか、まだはっきりとは分からない。
ただ胸の奥にだけが残っている。
はちがり、部のかりを消した。
の夜は静かに更けていく。
それから1が経過した。
が42歳になった初のことだった。
枝が倒れたのは、暑いの午のことである。
で着物を縫っていた、枝が突然顔を悪くした。
枝は腹を抑えてそのにうずくまる。
は慌てて駆け寄った。
「お母さん、丈夫ですか?」
枝は苦しそうに息を乱している。
はすぐに携帯話を取りし、救急を呼んだ。
サイレンの音が静かな町に響き渡る。
病院での検査結果は、予以に刻なものだった。
腸癌のステージ4である。
の医師が淡々と説を始める。
「すでに肝臓にも転移が見られます」
医師の説を聞きながら、のは真っになっていった。
「術は難しい状態です」
は病に戻った。
枝はベッドので静かに目を閉じていた。
その横顔はいつもよりさく見える。
は廊にて、すぐに達也に連絡した。
それから次男と男にも話をかける。
数、3の息子たちはすぐに病院へ駆けつけてきた。
達也が枝のを握る。
「母さん、しっかりしてくれよ」
次男と男も配そうに母を見つめていた。
はしれた所からその様子を見守る。
広告
ところが、数が過ぎると次男と男の姿が見えなくなっていった。
最初は仕事が忙しいからだとった。
だが1週経っても、2週経っても、2は病院に来ない。
が次男に話をかける。
呼びし音が鳴るだけでないことがくなった。
留守番話にメッセージを残しても、返事はない。
枝の入院費用について、病院から説があった。
抗がん剤治療や個代など、かなりの額になる。
は夜、自宅で達也と相談した。
「まず、3兄弟で分担するのはどうでしょうか」
達也も頷き、次男と男にそのことを伝えるをいた。
丁寧な文面で状況を説する。
しかし、返事は来なかった。
1ヶが過ぎても、2からは何の連絡もない。
もちろん入院費の伝いもなかった。
恵子や彩子の姿も、1度も病院で見ることはない。
枝があれほど切にしていた嫁たちである。
その嫁たちが、病気の姑を見うこともしないのだ。
は仕事のを縫って、毎病院へ通った。
朝、で数仕事をする。
それから午は病院へ向かう。
夕方まで枝に付き添い、またに戻って夜まで針をかした。
枝の容態はにに悪くなっていく。
抗がん剤の副作用で髪が抜け始めた。
事もほとんど喉を通らない。
は護師に教わりながら、枝の世話をした。
排泄の介助も、体を拭くことも、寝巻きを着替えさせることも。
夜の付き添いもが引き受けた。