"「和裁しかできない」嫁と20億円の着物" 第3話
2週ほどかけて、2着の訪問着が完成した。
枝が恵子たちに連絡を入れる。
週末にへ来てもらい、着物を渡すことになった。
曜の午、恵子と彩子が揃ってを訪れた。
2ともきちんとしたワンピース姿である。
玄関で靴を脱ぐ音が聞こえた。
恵子がるい声で挨拶をする。
「お母さん、こんにちは」
彩子も丁寧にお辞儀をした。
枝は嬉しそうに2を奥の部へ案内した。
「いらっしゃい。ちゃんと緒に頑張って仕てたのよ」
畳のには、綺麗に畳まれた2着の着物が置かれている。
恵子が着物をに取った。
「まあ素敵」
のがのを受けて柔らかく輝く。
彩子も藤の着物を見て微笑んだ。
「本当ですね。ありがとうございます」
2の表は穏やかで、謝に満ちているように見えた。
枝はちがり、台所へ向かう。
「お茶を入れるわね」
枝の音がざかっていった。
部にはと恵子と彩子の3が残された。
は着物の帯をえながら2の様子を見ている。
すると、恵子の表が変わった。
それまでの笑顔が消え、し満な顔になる。
恵子はさな声でをいた。
「このなんだけど」
その声にはらかに満が含まれていた。
恵子は眉をひそめた。
「え、私ピンクが良かったんですけど」
は驚いて顔をげた。
恵子は着物の袖を持ちげながら、を睨む。
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「ってなんかじゃないですか?私もっと華やかなが好きなんですよね」
彩子も自分の着物を広げてため息をついた。
「藤も微妙ですよね」
彩子は着物を畳のに放りした。
「もっとるいの方が写真映えするのに」
2の声は枝には聞こえないきさだった。
しかし、のにははっきりと届いた。
はどう答えていいか分からなかった。
この着物は枝と緒に何もかけて選んだものである。
2にうを真剣に考えて決めたのだ。
は焦ってをいた。
「あの、お母さんが懸命選んでくださって……」
ところが恵子が遮るように続けた。
「さんも緒に選んだんですよね」
恵子の線がたくを射抜いた。
「でも正直、センスが古いというか」
その言葉には胸が詰まった。
恵子は着物を乱暴に畳む。
「こんなの着て写真に残ったら恥ですよ。親戚に見られるんですから」
彩子が着物を畳みながらさく笑った。
その笑い声にはらかな嘲笑が含まれている。
彩子は肩をすくめた。
「まあ仕方ないですけどね」
彩子はをからまで見ろした。
「お母さんもだし、さんも裁しかできないだし」
恵子の言葉がのに突き刺さった。
裁しかできない。
その言葉はが番恐れていたものだった。
彩子が同するように頷く。
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「私たち普段は都で働いてるから、こういう古臭い覚分からないんですよね」
2はまるでがそこにいないかのように話を続ける。
恵子はため息をついた。
「本当は座のデパートで買った方が良かったかも」
彩子も笑いながら答える。
「そうそう。プロに任せた方がだし」
は何も言い返せなかった。
喉の奥がくなり、涙がそうになる。
だがここで泣くわけにはいかない。
は必にを向いた。
その、台所から枝の音がづいてきた。
恵子と彩子の表が瞬で変わる。
先ほどまでのたい顔が消え、また穏やかな笑顔に戻った。
枝がお茶を乗せたお盆を持って入ってきた。
「お待たせしました」
恵子が満面の笑みで枝を見つめた。
「お母さん、本当に素敵な着物をありがとうございます」
その声はさっきまでとは全く違うるさだった。
彩子も着物を胸に抱いてんでいるふりをする。
「私もとっても気に入りました。結婚式が楽しみです」
枝は2の様子を見て嬉しそうに微笑んだ。
「よかったわ。ちゃんと緒に本当に頑張って作ったのよ」
恵子がに向かってをげた。
「さん、ありがとうございます」
とはいえ、その目は笑っていない。
たい線が瞬、を射抜いた。
はさく頷くことしかできなかった。
胸の奥にたいが沈んでいくような覚になる。
お茶をみながら、枝は嬉しそうに話を続ける。
恵子と彩子は完璧な嫁の演技を続けていた。