"「和裁しかできない」嫁と20億円の着物" 第2話
それだけを何千回も繰り返す。
夜、宿に戻ると指が痛くて箸も持てないほどだった。
それでもは諦めなかった。
枝の技を見るたびに、は元を見つめる。
自分もあんなになりたいとった。
1枚の布が枝のにかかると、魔法のように美しい着物へと変わっていく。
その姿には何度もを打たれた。
1が過ぎた頃、枝がの方を向いた。
「あなた、筋がいいわね。このまま頑張りなさい」
は顔をげて枝を見た。
その言葉がどれほど嬉しかったか。
は初めて自分のに誇りを持てた気がした。
修を始めて2目の、は1の男性と会う。
枝の男、佐藤達也である。
達也は当30歳で、隣町の建設会社に勤めていた。
休になると母のを伝いに来るのだ。
達也はに入ると、穏やかな笑顔でに声をかけた。
「いつもお疲れ様です」
はを止めてお辞儀をした。
最初はただの挨拶だとっていた。
しかし次第に、達也との会話が楽しみになっていった。
達也は真面目で優しいだった。
母の枝を切にし、仕事にも誠実に向きっている。
はそんな彼にしずつ惹かれていった。
1ほど経ったの、達也はのにった。
真っ直ぐにの目を見つめる。
「結婚を提に、お付きいしてもらえませんか?」
は驚きとびで胸がいっぱいになった。
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自分のような者が、こんな素敵なと結婚できるなんてのようだった。
枝も2の交際をんで認めてくれた。
枝は優しく微笑んだ。
「ちゃんなら、して息子を任せられるわ」
1、と達也は結婚した。
結婚も、はで裁の仕事を続けた。
枝と緒に毎着物を仕てる々である。
姑と嫁という関係でありながら、2は師匠と弟子でもあった。
好きな仕事でべていける。
はからそうった。
貧しかった子供代、何も取り柄がないとっていた自分。
それが今は派な裁職として認められている。
達也は優しい夫だった。
仕事で疲れて帰ってきても、達也はの話を笑顔で聞いてくれる。
枝も厳しいながらも温かい姑だった。
3で過ごす々は穏やかで幸せなものだった。
それでも、の胸の奥にはさながあった。
それは自分が本当にこの幸せに値するなのかという疑問である。
夜眠るに、は布団のでふとう。
私はただ針を持つことしかできない。
それ以に何の価値があるのだろうか。
窓のでは川越の古い並みが静かに眠っていた。
の夜が戸の隙から優しく吹き込んでくる。
は静かに目を閉じる。
も針を持つだろう。
それが自分のきるなのだから。
はそのままい眠りについた。
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結婚して15が経過した。
が41歳になったのことだった。
枝が嬉しそうにでに話しかけてきた。
「ちゃん、今度ね」
枝は棚から反物を取りす。
「恵子ちゃんと彩子ちゃんに、着物を仕ててあげようとうの」
恵子は次男の妻である。
彩子は男の妻だった。
どちらも30代半ばの聡な女性たちである。
恵子は都内の製薬会社で管理職をしている。
学は慶應をて、英語も堪能だと聞いていた。
彩子は名な商社に勤めていて、張もいという。
彼女は稲田のだった。
は2と会うたびにし緊張する。
話す内容も、自分とは全く違う世界のことばかりだからだ。
だが枝は、嫁たち全員を平等にがってくれた。
枝は反物を畳のに広げた。
「来、親戚の結婚式があるでしょう。そのに着てもらおうとって」
広げられたのは、淡いの訪問着とい藤の訪問着だった。
どちらも品な柄が入った美しいである。
は枝と緒に着物を仕て始めた。
2で相談しながら丁寧に作業をめていく。
はのを見つめた。
恵子には、彩子には藤が似うだろうと話しった。
枝は針をかしながらをく。
「この子たち、普段はばかりでしょう」
枝の声には母親としての優しさが溢れていた。
「たまには着物も着せてあげたいのよ」
も義母のその気持ちが嬉しかった。
自分も族の員として切にされているとじる。