"深夜の義実家" 第11話
とヒステリックに鳴り散らした。
息の詰まる支配を受け続け、ヶが経過した頃のことだった。 あるの午、台所の奥から、義母が誰かと話で言い争っている険悪な声が漏れ聞こえてきた。 普段の猫撫で声とはまるで違う、ドスの利いた品な声。私は廊のにを潜め、を澄ませた。
「……だから、どこを探しても嫁の預通帳もキャッシュカードも見当たらないのよ! 通帳がないのはまだしも、キャッシュカードの枚も作ってないなんてあり得ないでしょうが!? 暗証番号以の問題よ!」 義母は受話器を握り潰さんばかりの勢いで鳴り散らしていた。 ――私の座を探している? 義母はらなかったのだ。私がすべての資産管理をネットでっており、物理な通帳を持たず、カードすら必最限しか発していないということを。
退院して以来、私は毎初めに活費として分すぎるほどの現を義母に渡していた。夫の入院費用もすべて私が座から直接振り込んでおり、義母が銭に困窮する理由などどこにもないはずだった。それなのに、なぜ義母は血になって私の預通帳を探し、見らぬ相と揉めているのか。
そのとき、私のポケットのでスマートフォンがさく振した。 画面を見ると、正彦が入院している病院の代表番号だった。
広告
――まさか、正彦の識が戻ったのか!? 私は臓を激しく打ち鳴らしながら通話ボタンを押した。 「はい、あずさです!」 『あ、あずささんですか? ナースステーションの者ですが……ご主の洗濯物が溜まっておりますので、おのあるに引き取りに来ていただけますでしょうか』 「あ……洗濯物、ですか……」 数に取りにったばかりだったため、肩透かしをらったような失望に襲われた。だが、この監獄から抜けす実にはなる。
私は話を切ると、通話を終えてイライラと爪を噛んでいた義母に向かって努めて平静を装って声をかけた。 「お母さん。病院から連絡があって、正彦の洗濯物が溜まっているそうなんです。お見いも兼ねて、緒にきませんか?」 義母は鬱陶しそうに眉を寄せ、持っていたスマートフォンのマイク部分をで覆いながら吐き捨てるように言った。 「今、取り込みなのが見れば分からないの!? 話しかけないでちょうだい! 昏状態でピクリともかない相のお見いにって、体何になるっていうのよ。あんたもそんな無駄なことしてないで、く仕事してを稼ぎなさい!」 「……では、私で洗濯物だけ引き取ってきますね」 私がそう告げると、義母は「あっちへけ」とシッシッとを振り、再び受話器に向かって喚き始めた。
広告
「さっさとって、すぐに帰ってきなさいよ! なんかったら承しないからね!」
私はく礼し、義実をびした。 きりでの空気を吸うのは、実にヶぶりのことだった。線バスを乗り継ぎ、へ向かう、義母の線がないというだけで、鉛のようにかった呼吸が驚くほど軽くなっていくのをじていた。
病院に到着し、私はに病棟のナースステーションへと向かった。 「すみません、正彦の妻ですが、洗濯物の引き取りに伺いました」 受付の護師に声をかけると、護師は私の顔をじっと見つめ、どこか緊張した面持ちでちがった。 「あずささんですね。お待ちしておりました……こちらへどうぞ」 「え……? 洗濯物は受付で受け取るのではないのですか?」 「ご案内したい所がございます。ついてきてください」
護師に先導され、私は普段ち入ることのできない厳なセキュリティ扉を抜けた。篤患者用の集治療区域を通り過ぎ、案内されたのは般病棟の個のだった。 「どうぞ、へお入りください」 護師が静かに引き戸をけた。 恐る恐るを踏み入れた私の目にび込んできたのは――ベッドのに半を起こし、穏やかな表でこちらを見つめる男性の姿だった。
「……正彦?」 私の声は掠れ、震えていた。 「よお、あずさ。
遅かったな」 そこには、点滴の管も酸素マスクもされ、しっかりと自分のでちがれるまでに回復した夫の姿があった。