みかん小説
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"深夜の義実家" 第5話

ふと、部の廊から、微かな物音が聞こえてきた。 ギシ、ギシ、とがきしむ音。布団を通して、何者かが廊を歩き回る振がダイレクトに背に伝わってくる。 ――正彦がトイレにでも起きたのだろうか。 寝ぼけたでそう解釈し、私は度途切れた眠りのへと再び識を沈めていった。

それから、どれほどのが経っただろうか。 依然として、の歩く音と細かな振が止まらない。 眠気に抗えず目を閉じたままでいたが、私の識の片隅で違が急速に膨らんでいった。 音が、らかに分ではない。 取りと、すりのような取り。複数のが廊き来しているような気配がする。義母と正彦が示しわせたように同に夜の廊を徘徊するなど、どう考えても自然だった。確実に、がそこにいる。

そう認識した瞬い力で肩を激しく揺さぶられた。 「う……ん……?」 驚いてび起きると、目のには汗びっしょりになった正彦の顔があった。肩で激しく息をし、瞳孔は見かれ、尋常ではない興奮と怯えがその表を支配していた。 「あずさ、今すぐ荷物をまとめろ!」 「え……? 何を言ってるの、今何だとってるのよ……」 枕元のスマートフォンに目をやると、刻はを回ったばかりだった。 「静かにしろ! すぐに乗れ! 変なことが起きているんだ!」

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正彦は私の制止も聞かず、部の隅に置いてあったバッグを引っ掴み、半狂乱で私を引きずりしたのだった。

から引き戻された私のに、を裂くような声がび込んできた。 「おい! 待ちやがれ!」 方から響いたのは、紛れもなく野太い男の叫び声だった。 はまだ義実を抜けたばかり。サイドミラーの界ので、玄関先にいた黒尽くめのつのが、こちらに向かって駆けそうとしているのが見えた。

「ちょっと、なんでこんな夜らない男たちがいるのよ!?」 私の鳴のような問いかけに、正彦は答えない。ただ奥歯を激しく噛み締め、ハンドルを握る刻みに震わせながらアクセルを踏み込み続けた。 私はに握りしめていたスマートフォンに目を落とした。 「と、とにかく警察に連絡しないと! さっきの物音、あの男たちだったのね!? お母さんは!? お母さんは丈夫なの!? あんなところにで残してきたら危ないじゃない!」

パニックに陥りながら、震える指で『110』をプッシュし、通話ボタンを押す。 呼びし音が数回鳴った、オペレーターの落ち着いた声が返ってきた。 『はい、警察です。事件ですか、事故ですか』 「助けてください! 義理の実に、見らぬ黒いを着た男たちが押し入ってきたんです! 今、私たちはで逃げていますが、には義理の母がで残されていて……すぐにパトカーを向かわせてください!」

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そのも、正彦は猛スピードでらせ、郊通りへと流していた。夜の幹線は信号が黄や赤の点滅に切り替わっており、っているの姿は台も見当たらない。 「母さんは丈夫だ……母さんは丈夫なんだ……」 正彦は壊れたレコードのようにうわ言を繰り返すばかりだった。 だが、の警察官の対応は、こちらの切迫とはかけれていた。 『落ち着いてください。通報者のお名と現は? 審者は何か凶器を持っていましたか? 実際に危害を加えられたのですか?』 「ですから、夜に突然男たちがにいて……! とにかくく義実って義母を助けてほしいんです!」 『ええと、もう度最初から詳しく説していただけますか。状況がよく呑み込めないのですが……』 夜の錯乱した通報と受け取られたのか、警察官は領を得ない質問を繰り返すばかりで、向に緊急の気配を見せない。同じ説を何度も最初から繰り返させられ、私の焦燥は頂点に達していた。

その様子を横目で見ていた正彦が、突如として激昂し、ハンドルを叩きながら絶叫した。 「もういい! 警察なんかに頼ってても無駄なんだよ!」 「正彦、何をする気なの!?」 「俺が戻って、直接あいつらと話をつければいいだけのことだ!」

正彦は歯を剥きしにして叫ぶと、通りから急激にハンドルをへと切り、央分帯の切れ目で猛烈なUターンを敢した。

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