"18年間閉ざされた納屋" 第2話
赤い鉛
兄の直は、私より8歳だった。
私が7歳の頃、兄は15歳。父はよく言っていた。
「直の能は7歳くらいしかない」
私はその言葉を、そのまま信じていた。
けれどのでの兄は、同じ7歳の私とはまるで違う扱いを受けていた。を選ぶも、へるも、べる物を決めるも、必ず父か母の許が必だった。
ある、兄と所の公園へこうとした。玄関で靴を履いていると、兄が筒を持ってきた。
「みーちゃん、これ」
朝、私が台所に忘れたものだった。
「ありがとう。お兄ちゃんもこう」
兄が靴へを伸ばした、母が玄関へ来た。
「直をでへ連れすのはやめなさい」
「じゃないよ。私もいるよ」
「そういうじゃないの」
「お兄ちゃんがきたいって言ったよ」
母は困ったように眉を寄せた。
「きたいって言っても、本当に分かって言っているとは限らないの」
兄は言葉がいではなかった。返事にがかかることもあり、きな音がするとを押さえた。のい所ではけなくなることもあった。
それでも兄には好みがあった。牛乳より麦茶。い靴より紺。夕方4になると庭の植鉢にをやり、のにはやらない。私が学から帰る刻も覚えていた。
算数のテストで100点を取った、私は答案を兄へ見せた。
「お兄ちゃん、見て」
広告
兄はより先に私の顔を見た。
「みーちゃん、嬉しい」
「うん。100点だったの」
兄は引きしから赤い鉛を本した。私が番よく使っていただった。
「これ、使う」
した物ではない。それでも私には分かっていた。兄は、何も分からないではない。
数、学の友達が遊びに来た。兄は居で、細く切ったをきさごとに並べていた。
「美咲のお兄ちゃん、何してるの?」
私が答えるに、母がてきた。
「直、部へこうね」
兄はを見た。
「まだ」
「続きはでいいでしょう」
母の声がくなり、兄は何も言わずを箱へ戻した。
夜、父は私を居へ呼んだ。
「直はおのお兄ちゃんだ。でも普通のお兄ちゃんと同じだとうな」
「どうして?」
「能は7歳くらいしかない。何か言っても、全部まともに受け取るな」
母も続けた。
「直が何かしたいと言っても、勝に約束しちゃだめよ」
「でも、お兄ちゃんが自分で言ったのに」
「兄弟だからこそ、の言うことを聞きなさい」
当の私は、父と母の方が兄をよくっているとっていた。だからしずつ、兄の言葉より先に両親の顔を見るようになった。
そんな私を、兄は避けなかった。
学で嫌なことがあり、縁側で泣いていた。兄は理由を聞かず、隣へ座った。しばらくして、さなの板を私の膝へ置いた。
鉛で、ひらがながいてあった。
「みさ」
「これ、私?」
兄は頷いた。
私が返そうとすると、首を横に振った。
「みーちゃんの」
私はその板を机の引きしへしまった。
その頃の私はらなかった。
兄がを並べることも、名をくことも、同じ形を何度も作ることも。
18、すべてがつの所に残されていることを。