"18年間閉ざされた納屋" 第1話
「直君、まだ裏の納にいるんだろう」
博士課程を修した、私は学位記の入った筒を抱えて学をた。研究の打ちげは断った。両親に報告したかったし、今こそ兄のことを聞くつもりだった。
兄の直と最に会ったのは、私が13歳のだ。母は「施設で暮らすことになった」と言った。それから18、私は施設の名も所も担当者もらない。
何度聞いても、返ってくるのは同じ言葉だった。
「直は環境が変わると定になる」
「会わない方があの子のためなの」
「おがる必はない」
学で発達理を学び、学院では決定支援を研究した。識が増えるほど、両親の説だけが分からなくなった。それでも私は、18も嘘をつかれているとはいたくなかった。
実の最寄り駅に着いたのは午3過ぎだった。駅を歩いていると、ろから名を呼ばれた。
「美咲ちゃん?」
振り返ると、買い物袋をげた佐藤文さんがいた。実の軒隣にんでいただ。髪は増えていたが、目元は子供の頃と変わっていなかった。
「学院だったでしょう?」
「今、博士課程を修したんです」
「まあ、おめでとう。直君もぶだろうね」
私はを止めた。
兄の名を、両親以のから聞いたのは何ぶりだろう。
「兄に会ったんですか?」
佐藤さんは議そうに首を傾げた。
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「会ったってほどじゃないけど」
「兄は施設にいるんです。私が13歳のから」
今度は佐藤さんが黙った。
「施設?」
「はい」
「そうなの? 私はてっきり、まだ裏の納にいるんだとってた」
の奥で何かが鳴った。
「納って……うちの?」
「そうよ。顔までは最見てないけど、の終わり頃にも戸の奥にが見えたし、お母さんが事を運んでるのも何度か見たから」
の終わり。まだ1かほどだ。
私は鞄からさなノートをした。学院に入ってから、兄について両親へ聞いたことを残してきたものだった。
「確認させてください。兄らしいを見たのは、うちの裏の納。最はの終わり頃。母が事を運ぶところも見た」
「そうよ」
そこまでいてペンを止めた。
佐藤さんに「閉じ込められていたんですか」とは聞かなかった。彼女が見たのはからの景だけだ。そこから先を勝に事実へ変えてはいけない。それでも、指先は震えていた。
「ありがとう。にってみます」
「美咲ちゃん、で丈夫?」
私はし考えてから頷いた。
「まず、自分で見ます」
実へ向かう途から、私はっていた。
施設名は必ない。所も教えない。担当者もらなくていい。会えば直が定になる。
18聞かされ続けた言葉が、のでつずつ繋がっていく。
の根が見えた。私は玄関を通り過ぎ、そのまま裏庭へ回った。
古い納は、子供の頃と同じ所にっていた。
ただ、扉ののだけが、自然なほど踏み固められていた。