"誇りの遺言と五千億の預金" 第16話
柔らかな朝のを浴びて、母が優しく微笑んでいる。
「そして、つ目です。……あなたが謝罪すべき相は、俺だけではありません。俺の母です」
リカがハッとして顔をげた。
「母はもう、この世にはいません。直接、をげることは叶わない。けれど、母の魂は空から見ています。……どうか、あの写真の母に向かって、あなたの発した言葉がどれほど醜く、残酷なものであったか、から詫びてください」
静寂が、部をく支配した。 郎が目を閉じ、く息を吐きすと、背の娘に向かって厳格な声で命じた。
「……リカ。くしなさい」 「……は……はい……」
リカは震える取りで、歩、また歩と母の写真のへと歩みた。 そして、のにゆっくりと両膝をつき、両を揃えて、額をフローリングのへと押し当てた。 窓から差し込む朝のに向かって、彼女のから、絞りすような、涙に濡れた声が紡ぎされた。
「島さんのお母様……本当に……本当に、申し訳ございませんでした……!」
言葉が途切れ、激しい嗚咽が漏れす。リカはに額を擦りつけながら、震える声で続けた。
「私は……学の頃から、あなたの切な息子さんを傷つけ続け……昨夜は、お母様の尊いそのものを侮辱いたしました……! 朝から晩までをにして働き、息子さんを派に育てげられたことは……本来、誰よりも尊敬されるべきことなのに……私は、それを嘲笑いました……お母様が遺された、番切なを……ゴミクズだと言って踏みにじりました……! 取り返しのつかないことをしてしまいました……本当に、申し訳ありませんでした……!!」
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ので初めて、己の放った言葉のみと罪さに押し潰され、リカは子供のように声をげて泣きじゃくった。 涼はその姿を、ただ静かに見つめていた。母の写真の微笑みは変わらない。もし母がここにきていたら、きっと「もういいのよ」と、この女のを取って許しただろう。
涼は静かに息を吸い込んだ。
「条件が満たされたものとし、全額の解約は撤回します。預の半分、千百億円は、平成の座に残しましょう」
リカが涙に濡れた顔をげた。その瞳に、微かな堵のが宿る。しかし、涼の言葉は容赦なく続いた。
「ただし――残りの千百億円は、予定通りへ移管します。これが、俺の最終な判断です」
総預の割が失われる最悪の破綻シナリオは回避されたものの、依然として千百億円という巨額の預が流することに変わりはなかった。平成にとっては、極めてく、痛烈な代償であった。 郎はく、くをげた。
「……寛なるご配慮、より謝申しげます。全ての条件を誠誠、履させていただきます」
郎がちがり、部を辞しようとしたその、涼は老取の背に向かって、静かに最の言を投げかけた。
「取。度と、の権威を振りかざしてを踏みつけにしないでください。
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……肩きがを偉くするのではない。々のこそが、を偉くするのです」
郎はその言葉をく胸に刻み込むように、無言でく礼した。その背は、かつてこのに君臨していた絶対権力者のものとはえないほど、さく萎びて見えた。
謝罪の翌朝、リカのスマートフォンは気な静寂に包まれていた。 毎のように鳴り響いていた取り巻きたちからのランチの誘いやお世辞のメッセージは、ただの通も届かなかった。
リカは震える指先で、親しかった友たちのトークルームをつつき、メッセージを送信してみた。 しかし、何待っても既読すらつかない。完全にブロックされていたのである。
「なんで……? どうして誰も返事をしてくれないの……!?」
に駆られたリカが何気なくSNSの画面をいた瞬、彼女の息が止まった。 タイムラインは、匿名の告発アカウントによる同窓会の暴投稿で埋め尽くされていた。
『【報】某方の取令嬢、同窓会で価総額8000億のIT企業CEOを「貧乏」と罵倒し爆』 『くなった母親の形見のを奪い取って嘲笑した極悪令嬢の末』 『平成、顧客のりを買って数千億円の預流危か!?』