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"誇りの遺言と五千億の預金" 第7話

「いいかい、涼。よく聞きなさい。お母さんがげるのはね、自分がいからじゃないのよ。あなたを守るためなの。どんなにを啜ったって、あなたを無事に育てげること……それだけが、お母さんのきるなの。お母さんの誇りはね、おでも位でもない。あなた自なんだから」

その言葉がに届いた瞬、涼の瞳から粒の涙がとめどなく溢れした。 母の荒れたのひらはヤスリのようにざらついていて、ひび割れた皮膚が痛々しかった。けれど、背を包み込むその温もりは、どんな級な毛布よりも、どんな宝よりも温かく、力かった。

(母さんの誇りを……俺が汚すわけにはいかない)

は母の胸ので、固く誓った。 それからの涼は、学でどれだけ悪質な嫌がらせを受けようと、机にどれほど汚い落きをされようと、決してを表にさず、ただ黙々と耐え抜いた。リカが嘲笑おうと、取り巻きが囃してようと、度たりとも言い返すことはしなかった。 母が命を削って守ってくれているこの所で、母の誇りであり続けるために。

やがてを卒業した涼は、全額付の奨学を勝ち取って都内の難関学の学部へと学した。学費と活費を自力で稼ぐため、寝るを惜しんでアルバイトと研究に没し、がむしゃらにき抜いた。

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学卒業IT企業での過酷な勤務を経て、涼は仲と共にさなITインフラ企業をげた。

しかし――母は、息子の成功を見届けるまできることはできなかった。 涼が会社をげてもない歳のは清掃現の控で静かに倒れ、そのまま度と目を覚ますことはなかった。因は過労による全であった。 最期まで赤く腫れがったのひらで、息子のためにさなおにぎりを握り続けてくれた母。

葬儀を終え、母の遺品を理していた涼は、古い製の箱の底から、通の封筒を見つけた。に入っていた便箋には、震えるような母の跡で、こう記されていた。

『涼へ。あなたは私の誇りです。どんなも、胸を張ってきなさい。母より』

あの嵐のような夜、布団ので母が語りかけてくれた言葉と、まったく同じ言葉だった。

、誰もいないアパートの部で、そのを胸に抱きしめて泣き崩れた。 それから。会社は社会の急激なデジタル化の波に乗り、な成を遂げたが、涼の質素な暮らしぶりは、あの頃と何つ変わっていなかった。

の記憶の奔流から、涼識はゆっくりと宴会の現実へと引き戻された。

元のグラスので、烏龍茶の氷がカランと静かな音をてて溶ける。

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と同じ、同じたちが集う空に、今夜再びっている。あの頃と違うのは、どれほど探しても、もう隣に母がいてくれないということだけだった。

さく息を吐き、グラスをテーブルのに置いたその瞬だった。

「――オホホホホ! ちょっと、それ本当なの!?」

央フロアから、鼓膜を突き刺すような甲い笑い声が響き渡ってきた。 涼の眉が微かにく。という歳が流れても、その声の調子、傲な響きは、の奥に焼き付いた記憶のそれと寸分違わず同じであった。

線を向けると、クリスタルのシャンデリアの真を、全を最級ブランドのオートクチュールドレスで包み、毛皮のショールを羽織った女が、数の取り巻きを引き連れて練り歩いていた。 リカ、歳。平成取・郎の娘であり、今やこののセレブ層の頂点に君臨していると自負する女であった。

ふと、リカの線が会の最果て、壁際のテーブルにで腰掛けている涼の姿を捉えた。 リカの細められた瞳に、かつての廊で見せたものとまったく同じ、歪んだ優越と悪の炎がチロチロと燃えがった。彼女はにした級シャンパングラスを揺らしながら、まるでの友にでも会ったかのような、わざとらしい取りで涼のテーブルへとづいてきた。

「あらあ? 島君じゃない! お久しぶりねえ。

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