"薬を忘れて戻ると、「歩けない」夫が立っていた" 第12話
錯乱した義母の声が、スピーカーから周囲の気へと漏れしていく。
佐織は元のバッグを膝のに乗せ、切のを排した声で、静かに告げた。
「お義母さん。助ける理由が、私には何つありません」
「な、何言ってるのよ佐織さん! 夫婦でしょう!? 健太の奥さんはあなたじゃないの!」
話の向こうで、数枝は半狂乱になって叫び続けていた。周囲からは、伯母の吉子が狼狽しながら「弁護士に話しろ! 親戚からをかき集めろ!」と喚き散らす声が漏れ聞こえてくる。
佐織は、たいが吹き抜ける駅ロータリーのベンチで、姿勢を微も崩さずに受話器をに当てていた。
「夫婦という言葉を、都のいい免罪符に使わないでください。健太さんが警察に連れてかれたのは、彼自が犯罪にを染めたからです。そして、その犯を能にしていたのは、お義母さんと健太さんがグルになって私を騙し、介護の名のにを奪い続けていたからですよ」
『だ、騙すだなんて……私はただ、健太がいばかりに……!』
「その歪んだが、息子を犯罪者に育てげたのです」
佐織の言葉は、氷の刃となって受話器の向こうの狂乱を刀両断にした。
「私の弁護士から、すでに自宅マンションの仮差し押さえ通と、財産分与および慰謝料請求の通が実と健太さん宛てに発送されています。
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会社の損害賠償請求も、実の連帯保証債務も、すべておで受けてってください。私は円もしませんし、これ以私や私の実に連絡を入れるなら、警察に接禁止命令違反として被害届を即座に提します」
『待ちなさいよ佐織さん! 健太を見捨てる気!? 刑務所に入ることになったらどうするのよ!』
「入っていればいいんじゃないでしょうか。自分ので犯した罪の責任を、刑務所のでじっくり償うのが、彼にとって唯の更です」
佐織はそれ以、義母の言葉を聞くことなく通話を切断した。
そして、そので健太、数枝、吉子、そして義実の親族すべての連絡先を着信拒否に設定し、アドレス帳から完全に消した。
画面が暗転した瞬、佐織の喉の奥から、くい吐息が漏れた。
肩の奥に張り付いていた、あのい子の触が、急速に散していくのをじた。
翌週の曜、佐織は梶原弁護士の事務所の個で、届いたばかりの公類の確認をっていた。
警察の取り調べに対し、健太は当初の虚勢が嘘のようにすべてを自供したという。主犯の元同僚から「名を貸して荷物を運ぶだけで毎30万円の当がる」と持ちかけられ、借返済の焦りから犯に加担したこと。会社を休む実として、腰の痛みを偽装し、主治医に虚偽の申告を繰り返していたこと。
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そして、妻に怪しまれないよう、実への送迎を隠れ蓑にしてしていたこと——そのすべてが、警察の調に克に記録されていた。
「相方の弁護士から、示談の申し入れが届きました」
梶原弁護士が枚の面をテーブルに置いた。
「健太氏の母親が自宅のを担保にを借り入れ、会社の損害賠償の部と、奥様への解決として括で支払う向を示しています。条件は、奥様からの婚届の受理、および民事の追加請求をわないこと」
佐織は面を瞥した。提示された解決の額は、佐織が拠したマンションの300万円に加え、精神苦痛に対する慰謝料として400万円、計700万円だった。
実のを担保にするということは、暮らしの数枝にとって、老の処を実質に失うことをしていた。息子を盲目に甘やかし、嫁からすべてを搾取しようとした母親が支払う、あまりにもい代償だった。
「これで、すべて終わるのですね」
佐織が呟くと、梶原は静かに鏡をし、温かみのある笑みを浮かべた。
「ええ。にサインをいただければ、本に婚届を役所に提し、公正証を作成します。マンションの宅ローンも、物件の売却続きによって全額相殺され、奥様に債務が残ることは切ありません」
佐織は元の万を握りしめ、迷うことなく署名欄に自らの名をらせた。