"入学式の日、愛人を選んだ夫への「お祝い」" 第8話
クレジットカードは限度額オーバーで止められ、消費者融の枠も井に達している。
逃げった瑠奈は、自分の荷物だけでなく、部の引きしに隠してあった健吾のわずかなヘソクリや通帳の類まで綺麗さっぱり持ちっていた。 婚姻関係は継続したまま。法な妻が蒸発したため、児童当の座変更や公な支援の続きを取ろうにも、女の署名や委任状がなければ窓で突き返される。
婚もできない。再婚もできない。 逃げたの置き産をで抱え、逃げのない極貧の活に縛り付けられるという、きた獄。
その、玄関のいドアがドンドンと激しく叩かれた。
「おい、吉沢! 夜に赤ん坊を泣かせっぱなしで何だとってんだ! 警察呼ぶぞ!!」
隣の部のからの号だった。 健吾はを抱え、暗い部の隅で、赤ん坊を抱いたままさく震えることしかできなかった。
翌朝、健吾はもできぬまま、赤ん坊を抱えて所の保育所へ駆け込んだが、「事の申請と就労証がなければ預かりも能です」とたく断られた。 結局、くれた無認の託児所に法な当料を支払い、最の万円札を崩して預ける羽目になった。
髭も剃らず、皺だらけのスーツを着て商社のオフィスへ滑り込んだのは、始業刻を幅に過ぎた午だった。
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「吉沢、お、今何だとってるんだ」
デスクに鞄を置いた瞬、直属の営業部が鬼のような形相で背にっていた。 以なら「すみません、顧客との急な打ちわせで」と適当な言い訳で切り抜けていた健吾だったが、眠と精神疲労で舌が回らない。
「あ、あの……庭の事で、どうしてもがせなくてですね……」
「庭の事? と逃げて嫁に捨てられたおの事など、会社には関係ないんだよ」
部のからびした言葉に、健吾の背筋が凍りついた。
「な……なんで、それを……」
「社へけ。今すぐだ。経理部とおの顧客の担当者が待っている」
部の徹な差しに背を押され、健吾は覚束ない取りで役員フロアの奥へと連された。 な社のドアをけると、そこには会社の顧問弁護士と、健吾が懇にしていたはずの取引先の役員が、類を広げて座っていた。
「吉沢君。座りたまえ」
社のく濁った声が響く。机のに叩きつけられたのは、健吾が過半にわたって提していた張旅費の精算と、交際費の領収の分い束だった。
「これらはすべて、君が佐伯瑠奈という女性との私な温泉旅や級レストランの費を、取引先の接待と偽って会社に請求していたものだな?」
「い、いや! これは正当な営業活の環でして……!」
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「嘘をつくな!!」
経理部がした。 「相方の社に裏取りはすべて完している! 『吉沢氏とそんな席を持った覚えはない』と正式な面で回答があった! 総額で百万円。これはな業務横領だぞ!!」
さらに、顧問弁護士が静かに枚の面を差しした。
「吉沢さん。あなたの奥様の代理である弁護士から、すでに公正証に基づく与差押えの予告通が届いています。これ以、君の私活の汚濁で会社の信用を傷つけられるわけにはいかない」
「ま、待ってください! 返します! 横領したは分割で必ず返しますから、クビだけは勘弁してください! 俺、子供をで育てなきゃいけないんです!」
健吾はに膝をつき、必に額を擦り付けた。 しかし、社の目はゴミを見るかのようにえ切っていた。
「警察に被害届をさないだけでも難いといなさい。……本付で懲戒解雇処分とする。退職は全額、横領の弁済に充当する。分は親御さんに請求させてもらうから、そのつもりでいなさい」
そのの午、健吾は段ボール箱つに私物を詰め込まれ、通用から放りされた。 オフィスの眩しい差しの、失業者となった代の男は、ただ呆然とち尽くすしかなかった。
同じ頃、健吾を捨てて逃げった・佐伯瑠奈にも、因果応報の鉄槌がろうとしていた。
瑠奈がを寄せていたのは、本の級タワーマンションだった。