"入学式の日、愛人を選んだ夫への「お祝い」" 第6話
バタン、とドアが閉まり、夜の静寂が戻ってきた。
リビングには、破壊されたクレイケーキのいと、私たちが勝ち取った絶対な勝利の証だけが残されていた。
翌、午。 都内の公証役において、制執認諾文言付きの公正証が、寸分の狂いもなく作成された。 支払いがでも滞れば、健吾の与座は裁判所を通じて即座に差し押さえられるという、逃げのない鉄の鎖。
役ので、健吾はに入れたしい婚届を握りしめ、やつれ果てた顔で私を睨みつけてきた。
「……これで満かよ。おみたいな性悪女、こっちから願いげだ! 瑠奈と活を始めて、おらが見げるくらい幸せになってやるからな!」
負け犬の吠えを残し、健吾はっていった。
そのの数か、私と美の活は、驚くほど平穏で、温かいに満ちていた。 父親という名の巨なストレス源が消えったがには、毎笑い声が溢れていた。 義母は「息子の始末の責任はかけて私が果たすわ」と言って、毎週末のように美の好物を持って遊びに来てくれた。学事の参観も、運会も、義母はカメラを構えて番の席で美を応援してくれた。
方、願叶って瑠奈と再婚した健吾の活は――まさに絵に描いたような転落劇の様相を呈していた。
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義母が興信所や親族経由で仕入れてくる報によると、の婚活は、スタートからわずか半で修羅と化していた。
健吾の取り与から、毎きっちり差し引かれる慰謝料の分割、養育費万円、そして私たちがむマンションの宅ローン。 健吾の元に残るは、にわずか数万円程度だった。
「ちょっと健吾! 今の活費、これだけ!? 賃も払えないじゃない!」 港区の級賃貸マンションを借りたものの、賃の支払いが滞り、わずかかで賃万円の郊の築古アパートへと都落ちを余儀なくされた。
瑠奈は、商社の営業マンとして羽振りの良かった健吾の「」と「見栄」に惹かれて略奪婚をしたのだ。 待ち受けていたのは、ボロアパートでの極貧活と、毎の借返済に追われる惨めな常。
「こんなはずじゃなかった! あんた、商社のエースじゃなかったの!?」 「うるさい! おがもっと節約しろよ! 誰のせいでこんな目に遭ってるとってんだ!」
の罵倒しう声は、アパートのい壁を突き破り、所迷惑として何度も警察を呼ばれる騒ぎにまで発展していた。
そして、再婚からが過ぎた初。 事態は、さらに破滅な結末へと舵を切ることになる。
瑠奈の妊娠が発覚したのだ。
がない。 蓄えもない。 それなのに、しい命がまれてくる。
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健吾は歓するどころか、を抱えて自に閉じこもったという。 美への養育費の減額を求めて庭裁判所に調を申してようとしたが、公正証に記載された「貞為による責配偶者からの減額請求は原則として認めない」という特約条項のに、弁護士からも匙を投げられた。
そして、男児が無事にまれた。 しかし、その赤ん坊の誕こそが、健吾にとっての「本当の獄」の幕けだったのだ。
赤ん坊がまれてから、わずかかの凍てつくようなの夜。
健吾が雇いの副業バイトから夜にアパートへ帰り着くと、部のは異様な静寂に包まれていた。 も点いておらず、吐く息がくなるほどえ切った畳。
「おい、瑠奈……? 気くらい点けろよ、寒いだろ……」
壁のスイッチを押した瞬、健吾はち尽くした。
部のにあったはずの、瑠奈の、バッグ、化粧品、貴属が、棚から綺麗さっぱり消えっていたのだ。 押し入れの装ケースは空っぽになり、ゴミ箱には千切られたの記写真が投げ捨てられていた。
そして――たい万の真ん。 毛布にくるまれたかの赤ん坊が、喉を枯らしてヒィヒィと々しく泣き叫んでいた。
赤ん坊の胸元に、セロハンテープで枚の便箋が貼り付けられていた。
殴りきされた、瑠奈の文字。
『貧乏の子育てなんて、まっぴらごめん。 私、もっとお持ちの彼氏ができたから、そっちにきます。