"入学式の日、愛人を選んだ夫への「お祝い」" 第5話
「あなたが今、娘の入学式を放棄してと法に婚届をそうとした通話の録音。それから、自分で『切り裂いてやる』と叫びながら牛刀を振り回して自分の私物を切り刻んだ、今の部始終の画。……全部、綺麗に撮れてるわよ」
健吾のきが、ピタリと止まった。
「警察が来たら、どちらが異常者として扱われるかしらね。……それに、健吾。まだ話の半分も終わっていないわよ」
私は散らばった粘のから、踏みつけられて汚れたあの『婚届』を拾いげた。
「その……!」
健吾が息を呑んで婚届を見つめた。
私は健吾の目ので、その緑のを両で持ち、ビリッ……ビリビリッ、と音をててつ裂きに引きちぎった。
吹のように散らばる破片を見て、健吾の喉から絶叫が漏れた。
「な、何すんだよ! 俺の婚届を……!」
「言ったはずよ、健吾。私はこの婚届にサインした覚えはないって」
私はダイニングチェアを引き、然と腰をろした。 そして、バッグからあらかじめ用してあった別の分い類を取りし、テーブルのに叩きつけた。
【解約ならびに婚付等公正証嘱託契約(原案)】
表題の文字を見た瞬、健吾の顔から血の気が引いていった。
「り、婚付……公正証……?」
「そうよ。あなたがどうしてもあの女と再婚したいなら、婚してあげないこともないわ。
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ただし――私の条件を【すべて無条件で呑む】ならね」
私は類の箇条きの条項を、指先でトントンと叩いた。
「第条、慰謝料。あなたと佐伯瑠奈の貞為、ならびに本の入学式放棄による精神苦痛への対価として、百万円。括払い。 第条、美の養育費。学卒業の歳のまで、毎万円。 第条、現んでいるこの分譲マンションの権利はすべて私に無償譲渡すること。残りの宅ローンは、あなたの名義のまま、あなたが全額返済し続けること」
「は、はああっ!?」
健吾の目がびさんばかりに見かれた。
「ふざけんな! 慰謝料百万!? 養育費万に、ローンの肩代わり!? そんな、払えるわけねえだろ! 俺の取りが幾らかってて言ってんのか! 破産しろってのかよ!」
「破産すればいいじゃない」 横から義母が、氷のような声で吐き捨てた。
「お、お袋……! 俺はあんたの実の息子だぞ!? なんで嫁の肩を持って、息子を破滅させようとするんだよ!」
「実の息子だからこそ、叩き潰すのよ!」 義母が初めて、のような号を炸裂させた。 リビングの窓ガラスがビリビリと震えるほどの迫力に、健吾の肩がビクッとねがる。
「歳の娘が、ランドセルを背負って父親を待っていたのよ!? その娘を裏切り、見せびらかすようにと役所へった男が、どの面げて親のけを乞うているの! お父さんがきていたら、今頃あなたの首根っこを掴んで隅田川に放り込んでるわよ!」
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義母は胸元から、もう通の茶封筒を取りし、テーブルへ叩きつけた。
「健吾。文句を言うなら、の朝番で、あなたの会社の社と事部にこれを持っていってもいいのよ?」
封筒の隙から覗いていたのは――健吾が会社の取引先接待と偽って、瑠奈と温泉旅へっていた際の領収と、ホテルので腕を組むの鮮な写真の束だった。
「会社の経費の私流用、横領罪ね。懲戒解雇はもちろんのこと、業界にあなたの名が回って、度と再就職なんてできなくなるわね。……どうする? カナさんの条件を呑んで公正証にサインするか、すべてを失ってブタ箱に放り込まれるか。選びなさい!」
逃げは、ミリも残されていなかった。
健吾の額から、滝のような脂汗が流れ落ちた。 震えるでからペンを拾いげ、唇を噛み締めながら、私の差しした契約の番の署名欄へとペンをらせた。
カリカリとを引っ掻く音だけが、静まり返った部に響く。
「……いたよ。けばいいんだろ……!」
投げやりにペンを投げ捨てた健吾に、私はややかに笑いかけた。
「ありがとう、健吾さん。の午、公証役で会いましょう。遅刻したら、即座にお母さんから会社へ話がいきますからね」
健吾は壊れたロレックスとボロボロのネクタイを棒のようにかき集めると、逃げるように玄関をびしていった。