"診察室に入れなかった私" 第10話
健の顔が、恐怖でに変していきました。
「恥? 恥ずかしいのは、自分の妻を隠れ蓑にして責任から逃げ回っていた、あなた自じゃないの」
私は首をし、類をまとめて自分のバッグへとしまい込みました。 バッグのファスナーを閉める属音が、静まり返ったリビングに鋭く響きます。
健はそのにち尽くしたまま、荒い息を繰り返していました。 何かを言おうとをけては閉じ、拳を握りしめては震わせています。 私はそのけない姿を瞥し、寝へ向かって歩きしました。
「今夜は、リビングのソファで寝て。あなたの顔を見ていたら、お腹の赤ちゃんが怯えてしまうから」
ドアを閉め、内側から鍵をかけました。 背から、健がドアノブをガチャガチャと回す音が聞こえてきましたが、やがて諦めたようにざかっていきました。
ベッドに倒れ込むと、急激な疲労が津波のように押し寄せてきました。 お腹のにそっとを当てます。 ポコン、と、微かな蹴るような触がありました。
「……丈夫。ママが絶対に、あなたを助けるからね」
私は暗ので井を見つめながら、もできないまま朝を迎えました。
翌朝、の空がみ始めた午。 リビングの気配を伺うと、健はソファで毛布にくるまり、疲れ果てたようにい眠りに落ちていました。
広告
私は音をてずに支度をえ、保険証と母子帳、そして昨夜の類を抱えて、マンションをました。
たい朝の空気が、を持った頬をよくやしてくれます。 向かう先は、総病院の産婦科でした。
午半。 受付が始まると同に窓へ向かい、神医師の診察を求めました。 予約の受診でしたが、昨の経緯をっている護師さんがすぐに気付いてくれ、奥の相談へと案内してくれました。
もなくして、神医師がの裾を揺らしながら入ってきました。 その目には、昨とは違う、医師としてのい責任と気遣いが宿っていました。
「佐藤さん、朝くからどうされましたか? 体調は丈夫ですか?」
「神先、これを見てください」
私はテーブルのに、昨夜健の斎から見つけした類の束を差ししました。 週目の診断の同、そして隠されていた本物の血液検査の結果表です。
神医師は無言でそれらをに取り、枚枚、眉にい皺を刻みながら目を通していきました。 隣につ護師さんも、息を呑むようにしてその類を見つめています。
「……やはり、そうでしたか」
神医師はくいため息を吐きしました。
「週の段階から、ご主はあなたに無断で検査を拒絶していたのですね。
広告
この血液検査の数値も、私がご主に直接渡しして『必ず奥様に見せて説してください』とを押したものです」
「先、私は今、はっきりと自分のをお伝えしに来ました」
私は背筋を伸ばし、医師の目をまっすぐに見据えました。
「これまで私の名で提された拒絶の類は、すべて夫が私のを無して偽造したものです。私には、治療を拒否するつもりは切ありません。赤ちゃんの命を守るためなら、入院でも、インスリンでも、肺成熟のステロイド注射でも、今すぐ受ける覚悟があります」
私の言葉に、神医師の表が引き締まりました。
「よく話してくださいました。まず、本付でカルテに記載されているご主の『代理権限』を完全に剥奪します。今のあらゆる治療方針、同のサイン、緊急の連絡は、すべて佐藤千さんご本の署名と判断のみを効とします」
護師さんが素く元のタブレットを操作し、システム内の権限変更をっていきます。
「そして、入院の続きですが」
神医師が元のスケジュール表を確認しました。
「本来なら来週の予定でしたが、昨からの精神ストレスも考慮すると、刻もい方がいい。の曜から管理入院とし、直ちに子宮収縮抑制剤の点滴と、血糖コントロールのプログラムに入りましょう。
で、入院の準備をえて病院に来てください」
「はい。ありがとうございます」