"夜勤明け、鍵を替えられた私の静かな反撃" 第4話
目を覚ました、ホテルの遮カーテンの隙からは、傾きかけた午のオレンジのが条の線となって差し込んでいた。
枕元のデジタル計は、午分を示している。 のように眠ったことで、の激務による肉体の痺れは嘘のように引いていた。脳内の酸素が巡り、考は凍てつく刃のように研ぎ澄まされている。
はベッドから起きがり、デスクのの黒いビジネスバッグを引き寄せた。 内側のファスナーポケットから取りしたのは、病院の類をまとめているのクリアファイル。 その番奥に、に交付された枚の公な用が、折り目つない状態で切に保管されていた。
【青葉病院 職員借社宅利用許証】 【物件名:グランドメゾン 〇号】 【契約形態:法契約(賃借:医療法社団青葉会)】 【入居者:護部・救急救命センター 吉沢】
これが、あの〇号の隠された「真の姿」だった。
結婚当初、拓也は収入のフリーターであり、都内の優良賃貸物件の入居審査など通るはずもなかった。 『俺はまだ資格の勉だから、とりあえずおの名義で借りてくれよ』 そうけなく縋り付いてきた拓也のために、は学病院の福利制度を利用し、セキュリティ万全の級マンションを「病院借げ社宅」
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として申請したのだ。
契約者も、法な賃借も、すべて【青葉病院】。 賃万円のうち、万円は病院が福利費として負担し、残りの万円だけが、の毎の与から自に引きされていた。
拓也は、の与細など度も見たことがない。 計のすべてをに丸投げし、自分のバイト代はパチンコやゲームに消えていたため、通帳に「賃」の引き落とし項目がしないことすら気づいていなかった。
そして義母のかず子は、所や親族に対してこう吹聴していた。 『うちの優しい息子がね、の嫁のためにあんな派なマンションにまわせてやってるのよ!』
その傲な妄が肥化した果てが、今朝の「鍵の交換による締めし」だった。 彼女たちは、を追いせば、あの豪華な部を自分たちだけでタダで独占できると本気で信じ込んでいるのだ。
「……本当に、救いようのない寄虫ね」
はたい声で呟いた。 法契約の社宅である以、入居の正当な根拠は「職員であるがそこに居していること」ただ点に尽きる。 が退届を枚提した瞬、その部に対する病院の契約は解除され、残された同居には法な滞権限など秒たりともしなくなる。 ましてや、法の許なく鍵を勝に交換するなど、管理会社に対するな契約違反であり、刑法の器物損壊罪にならない。
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は帳をき、青葉病院の総務課の直通番号をプッシュした。 呼びし音が回鳴った、聞き慣れた穏やかな女性の声が応答した。
『はい、青葉病院総務課、佐々でございます』
「佐々さん、お疲れ様です。救急救命センターのです」
『あら、さん! 今は夜勤けでお休みのはずでしょう? 何か体調でも崩されたの?』
佐々は代のベテラン職員で、頃から過酷な救急病棟を支える護師たちの労働環境にく配慮してくれる、極めて信頼のい女性だった。
「いえ、体調は丈夫です。……お忙しいところ申し訳ありませんが、至急、ご相談と続きをお願いしたいことがありまして」
『急ぎの用件? 何かしら』
は窓のの青空を見つめ、切のを交えずに事実を告げた。
「現入居しております、〇号の社宅の退続きを、本付でめていただきたいのです」
受話器の向こうで、キーボードを叩くカタカタという乾いた音が、ピタリと止まった。
『……え? 退……ですか?』
佐々の声のトーンが、事務なものから警戒を含んだ真剣なものへと切り替わる。
『さん、ご主やお義母様と緒に、別の所へお引越しされるということかしら?』
「いいえ。私だけが退します。現、私は駅のビジネスホテルに避難しています」
『避難……? 体何があったの?』
「今朝、の夜勤を終えて帰宅したところ、玄関の鍵がしいものに勝に交換されており、に入ることができませんでした。