"ゴミ箱の隣に座る学年一位" 第13話
佐伯の母親は、息を呑んで顔を覆いました。 細く乾いた指先が、刻みに震えていました。
「そんな……あとしかないのに……」 「ですから、諦めていただきたいのです」
私はを乗りし、氷のような線で彼女を見据えました。
「真優さんが学に来られないことは、あなたが番よく分かっているはずです。半も引きこもっていた子が、いきなり全徒の好奇の目に晒される教に来られるわけがないでしょう? 無駄な期待を抱かせて、最によりい傷を負わせるだけです。自主退学届をしてください。そうすれば、も諦めがつきます」
私の言葉は、切の容赦のない刃でした。 の庭の事など、ったことではない。 が子を守るためなら、私はいくらでも残酷になれる。そう自分に言い聞かせていました。
佐伯の母親は、ボロボロと粒の涙をテーブルにこぼしながら、何度も頷きました。
「お母様……おっしゃる通りです。全部、私の育て方が悪かったんです。真優に無理をさせて、学に入れたのが違いだった……。でも、でもね、お母様」
母親は震えるで、古びたトートバッグのから、冊の学ノートを取りしました。 表には、見慣れたの丸みのある丁寧な文字で、「数学Ⅱ・ポイントまとめ」とかれていました。
「さんは……本当に、優しいお子さんです。
広告
毎、毎、夕方にうちのポストに来て……これを入れてくださるんです。最初の頃は、ただプリントが入っているだけでした。でも、真優が部のドア越しに『もうにたい』って泣いた……その次のから、ノートの端に、メッセージがかれるようになったんです」
佐伯の母親は、ノートの最のページをきました。 そこには、さなピンクの付箋が何枚も貼られていました。
母親はそのの枚を、震える指でそっと剥がし、私の方へと差ししました。
「これ……真優が、枕元にずっと置いて、毎晩握りしめて泣いているんです」
私は眉をひそめながら、その付箋に目を落としました。
の湿気を吸ってし波打ったのに、確かにの跡がありました。 しかし、それは私がで見慣れていた、あの完璧で揺るぎのない優等の字ではありませんでした。 ペン先が何度も震え、圧がくなったりくなったりしている、どこか切迫した文字でした。
『真優ちゃんへ。 もし、みんなの目が怖いなら。 教に入るのが息ができないくらい苦しいなら。 番のドアじゃなくて、ろのドアから入っておいで。
ろのドアをしだけけたら、すぐそこが私の席だよ。 のたちはみんな黒板を見てるから、誰もあなたのことを見ない。 誰の顔も見なくていいの。
広告
私が隣にいるから。 私がそこに座って、ずっと待ってるから。 だから、自分の所を捨てないで』
付箋にかれた文字を読んだ瞬、私のの芯が、鈍器で殴られたように激しく揺れました。
『誰の顔も見なくていいの』
どうしてが、そんな言葉をっているのか。 誰の顔も見なくていい? の評価ばかりを気にし、常にの顔を伺い、番で背筋を伸ばしてきたあの子が、どうしてそんな、逃げを求めるような言葉を紡ぐことができるのか。
「さんはね……」
佐伯の母親の掠れた声が、くから聞こえてきました。
「うちの真優を助けようとしてくださっているだけじゃないような気がするんです。まるで……自分自に言い聞かせているような、そんな気がして……」
「くだらない!」
私は付箋をテーブルのに叩きつけました。 臓が激しく波打ち、全の毛穴がくような嫌な汗が噴きしていました。
「ただの子どもの傷です! こんな切れ枚で、が変わるわけがないでしょう! とにかく、曜には机は撤されます。を巻き込むのは、輪際やめてください!」
私は千円札を乱暴に伝票のに置き、逃げるようにをびしました。
のは、さらにくなっていました。 たい粒が顔に打ちつけ、スーツをぐっしょりと濡らしていきました。
それでも私はりました。 の奥で、のいたあの文字が、警報のように鳴り響いて止まりませんでした。