"ゴミ箱の隣に座る学年一位" 第10話
狭い玄関には、脱ぎ散らかされた古いスニーカーがと、何通もの未払いの請求が積まれた駄箱がありました。 活の困窮と、沈み切った空気が、澱んだ埃の匂いとともにをつきました。
女性――佐伯真優の母親は、に正座せんばかりの勢いでくをげました。
「お、お母様……申し訳ありません。本当に、申し訳ありません……!」
いきなりの謝罪に、私は眉を吊りげました。 靴を脱ぐ気にもなれず、私は玄関の敷居に仁王ちのまま、たく見ろしました。
「何が申し訳ないのか、ご自で分かっていらっしゃるのですか?」 「は、はい……さんが、毎毎、うちの子のためにノートを届けてくださっていること……。本当に、謝してもしきれなくて……でも、まさかお母様に内緒だったなんて……」
母親の目から、ボロボロと涙がこぼれ落ちました。 しかし、その涙を見ても、私のは微も揺らぎませんでした。むしろ、その無力で被害者ぶった態度が、苛ちに油を注ぎました。
「謝? そんな言葉で済まされるとっているのですか?」
私は段、声をく落としました。
「は、学トップの特です。あの子には将来があるんです。それなのに、あなたのお子さんにノートをき、ボイスレコーダーを買い与え、自分の特クラスの講習まで辞退したんですよ!? ごでしたか!?」
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「えっ……と、特講習を……?」
佐伯の母親は、信じられないものを見たように目を見きました。 本当にらなかったようでした。
「あの子はね、教の番ろの、ゴミ箱の隣の席に自分から移したんです。学級委員も辞めさせられました。なぜだか分かりますか? あなたのお子さんの、誰も使っていないあの空っぽの机を、教から追いされないように守るためですよ!」
私の激しい言葉のつつが、母親の体を鋭く切り裂いていくようでした。 母親は両で顔を覆い、しゃがみ込むようにして肩を震わせました。
「そんな……そんなことまで……真優のために……どうして……」 「こっちが聞きたいわ!」
私は玄関の壁を指でく弾きました。
「なぜ、のうちの子が、そこまで犠牲にならなきゃいけないんですか? 学に来られないなら、潔く休学するか退学なさればいいでしょう! 自分のでてないが、頑張っているのを引っ張らないでください! の好に甘えて、あの子の未来を連れにするのは輪際やめていただきたい!」
残酷な言葉だとは分かっていました。 でも、これが現実でした。者に付きって共倒れになるほど、世のは甘くない。 私はを守らなければならなかったのです。
私の容赦のない言葉に、佐伯の母親はに額を擦り付けるようにして、絞りすような声で泣き崩れました。
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「おっしゃる通りです……。本当に、お母様のおっしゃる通りです……。うちの真優が、全部悪いんです……。でも……でも……!」
母親は涙に濡れた顔をげ、すがるように私のスーツの裾を見げました。
「学から……最通牒が、届いたんです」 「最通牒……?」 「はい……」
母親は震えるで、駄箱のから通のい封筒を取りしました。 それは、桜ヶ丘の教務部から送られた、正式な通文でした。
『級および籍資格に関する最終判定のご案内』
私はその類を奪い取るようにして目をらせました。
「……来週の曜。学期の考査の初です」
佐伯の母親は、嗚咽を漏らしながら言葉を継ぎました。
「このの朝のショートホームルームまでに、度でも教の自分の席に着席しなければ……席数の規定により、今度の級は能となり……自主退学の続きを取ると、先から宣告されました」
私の指先が、類を握ったまま固まりました。
「真優は……もう何ヶも、部から歩もられない状態でした。でも、さんが毎届けてくださるノートを読んで、録音された先の授業の声を聞いて……最、ようやく『私、学にきたい。もう度、教に戻りたい』って、泣きながら言ってくれたんです……! さんは、その真優の言葉を聞いて……『絶対に席をなくさせないから。
待ってるから』って……!」
来週の曜。 あと、週もない。
「あの机は……真優が戻るための、最の所なんです……! あれがなくなったら、真優は度と……度と学にけなくなってしまう……! 退学になってしまうんです……!」