"元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒" 第8話
「しばらく別居を続ける」
「まだ許さないのか」
その言葉で、やはりそうなのだとった。
「許すとか許さないじゃない」
「じゃあ何だよ」
「私は、あなたの嫌を怖がらずに暮らせる所が必なの」
拓也がテーブルをさく叩いた。
周囲の客がこちらを見た。
彼はすぐにを引っ込め、声を落とした。
「たった何回かの喧嘩で、こんなげさにするのか」
私はちがった。
その言で分だった。
彼はまだ、数を数えている。
私は恐怖のきさを話しているのに。
別居からか半。
拓也からの連絡はなくなった。
私はしずつ、自分の活を取り戻していた。
仕事帰りに本へ寄る。
休にで映画を見る。
帰宅を誰にも報告しない。
そんな当たりのことに最初は罪悪があった。
ある夕方、会社をると、歩の向こうに拓也がっていた。
胸がえた。
しかし以のようにが止まることはなかった。
「織」
彼はづいてきた。
「しだけ話せないか」
私は会社の入からが入りしている所をれなかった。
「ここなら」
拓也は周囲を見た。
「俺、どうしたらいいか分からないんだ」
「何が?」
「謝っても駄目。親に頼んでも駄目。を置いても帰ってこない」
本気で困っている顔だった。
「これ以、俺にどうしろっていうんだよ」
私はそこで初めて、拓也も自分ので同じ仕組みに閉じ込められていることに気づいた。
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る。
謝る。
元に戻る。
それ以のやり方をらない。
だから謝罪が通用しなくなった途端、何をすればいいか分からなくなったのだ。
「あなたは、私が戻るための正解を探してる」
拓也が顔をげる。
「でも、そんな正解はないよ」
「じゃあ態度で示す。絶対鳴らない。度ともさない。織が見ていてくれれば――」
「私はあなたの監役じゃない」
拓也の言葉が止まった。
「あなたが変われるかどうかを、私がそばで確認する必はないの」
「夫婦だろ」
「夫婦だったから、ずっとやってきた」
私はゆっくり息を吐いた。
「でも、その役目をもう引き受けない」
拓也は面を見た。
「婚するのか」
「今すぐ届をすつもりはない。でもには戻らない」
「いつまで」
「分からない」
以の私なら、相をにさせる答えを言えなかった。
必ず「週くらい」「しだけ」と期限をつけただろう。
でも今は、本当に分からない。
だから分からないと言った。
拓也はしばらくち尽くしていた。
追いかけてこなかった。
駅へ向かいながら、私は度も振り返らなかった。
その夜。
実で父とお茶をんでいる、私はずっと気になっていたことを尋ねた。
「お父さん」
「何だ」
「最初の、どうして拓也の会社の所を聞いたの」
誠の目が止まった。
「あの、会社へはってないって言ったよね」
「ああ」
「調べてもいない?」
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「いない」
「じゃあ何で?」
父はしばらく湯呑みを見つめていた。
やがて、静かに答えた。
「乗り込もうとったからだ」
私は息をんだ。
「おの頬を見た瞬、会社へって胸ぐら掴んでやろうとった」
父の声には、今まで聞いたことのないがあった。
「警察官としてじゃない。ただの父親としてな」
「じゃあ……」
「だから所を聞いた」
私はますます分からなくなった。
「でもかなかった」
「ああ」
父は両で湯呑みを包んだ。
「所を聞いたら、し落ち着いた」
「どういうこと?」
「いつでもけるとえたからだ」
誠は自嘲するように笑った。
「相の居所も分からないと、は余計にので暴する。会社がここだと分かったら、『こうとえばける』と自分に言い聞かせられた」
私は父を見つめた。
あの質問は。
拓也を調べるためではなかった。
父自を止めるためだったのだ。
「警察にいた頃な」
誠が続けた。
「夫婦のの暴力で族が駆けつけたケースを何度も見た」
私は黙って聞いた。
「親が相を鳴る。娘を無理やり連れ帰る。すると次のには、本が夫をかばい始めることがある」
胸が痛んだ。
「『そこまでじゃなかった』『父がげさにした』『夫にもいいところがある』ってな」
まさに私だった。
「相が親だと、なおさらになることもある。自分の結婚を否定されたとうから」
父は度言葉を切った。
「俺がおの代わりに拓也君を悪者にしたら、おは自分の目で見る会を失うとった」