"元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒" 第5話
《もう度としない》
《迎えにく》
私は画面を見ながら、昨までならどの言葉でが揺れたかを考えた。
たぶん全部だった。
でも今は、どれもに読んだことがある文章に見えた。
朝の席で私は父に言った。
「今、度マンションへ戻る」
誠の箸が止まった。
「荷物を取りにくだけ」
「でくのか」
「うん。昼だし、拓也もいるとう」
父は何も言わなかった。
私は続けた。
「でも、夕方にはここへ戻る」
その初めて、誠がさく頷いた。
「おの部は空いてる」
それは「帰ってこい」ではなかった。
私が自分で戻る所を選べるように、そこを空けてくれているというだった。
マンションへ戻ると、拓也は待っていた。
休なのにきれいなシャツを着て、部も見違えるほど片づいていた。ダイニングには私が好きなパンと淹れたてのコーヒーまで用されている。
「昨は本当に悪かった」
拓也は玄関でをげた。
「晩考えた。俺、最おかしかったとう」
私は靴を脱ぎながら何も答えなかった。
「コーヒーもう。ちゃんと話そう」
その景を見て、ようやく分かった。
これは何度も繰り返してきた儀式なのだ。
拓也がる。
私が怯える。
拓也が謝る。
甘いものかを買ってくる。
私が受け取る。
するとの来事がなかったことになる。
私はダイニングを通り過ぎ、寝へ向かった。
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クローゼットからボストンバッグをす。
「何してるんだ?」
「仕事のを持っていくの」
「どこへ」
「しばらく実にいる」
拓也の表が変わった。
「は?」
私は淡々とスーツやブラウスをバッグへ入れた。
「俺、謝っただろ」
その言で、が止まった。
鳴られたからではない。
むしろ、あまりに分かりやすかったからだ。
「うん。謝ってくれた」
「じゃあ何なんだよ」
「謝ったら、全部終わりなの?」
拓也が黙る。
「あなた、昨のことだけだとってる?」
「昨は俺が悪かったって言ってるだろ」
「昨だけじゃない」
声は震えていなかった。
「私、あなたが帰ってくるになると緊張するの。玄関のけ方で嫌を考えて、音で今は何を言わない方がいいか考える。話していても、あなたが帰るには切らなきゃとう」
拓也は困惑した顔をした。
「そんなげさな」
また同じ言葉。
私はボストンバッグのファスナーを閉めた。
「それを私がずっと自分に言ってきたの」
「織」
「でも、もうやめる」
拓也は私の腕をつかみかけた。
ほんの瞬。
が宙で止まった。
私が彼のを見ていたからだ。
拓也はゆっくり腕をろした。
「お義父さんに何吹き込まれた」
「お父さんは何も言ってない」
「嘘つけ」
「本当に何も言われてない。帰るのも残るのも自分で決めろって言われただけ」
拓也の顔が赤くなった。
「親に洗脳されてることに気づけよ」
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その言葉で、最に残っていた罪悪が消えた。
私はバッグを持ちげた。
「しれて考える」
「勝にしろ」
拓也は吐き捨てた。
「そうやって俺を悪者にしたいなら好きにすればいい」
玄関のドアを閉めるまで、私は度も振り返らなかった。
エレベーターの鏡に映った自分の顔は青ざめていた。
それでも。
頬には、もう隠さなければならない痣はなかった。
実から会社へ通う活が始まった。
通勤は以の倍くになったが、朝起きたの体のさは驚くほど軽かった。隣で眠るの呼吸からそのの嫌を推測しなくていいだけで、朝というはこんなにも静かなものなのかとった。
最初の数は、仕事もスマートフォンが鳴るたびに体がくなった。
拓也からは文のメッセージが何度も届いた。
《俺は本当に反省している》
《仕事のストレスを庭に持ち込んだ》
《もう度だけチャンスがほしい》
ところが読み返しているうち、つ気づいたことがあった。
かれているのは全部、拓也のことだった。
自分が眠れない。
自分が悔している。
自分には私が必だ。
私がどうじていたかについては、ほとんどかれていない。
私は返信を急がなくなった。
父も何も言わなかった。
「婚しろ」とも「許してやれ」とも言わない。朝を作り、聞を読み、私が仕事へるには「気をつけて」
と言うだけだった。
週、私は会社の昼休みにくの女性相談窓へ話をした。