"義母の合鍵が入らない" 第11話
もう誰も邪魔しないわ。お義母さんの美しい煮物を毎べて、で仲良く暮らせばいいじゃない」
「待ってくれ! 由、待ってくれよ!」
健が子を倒さんばかりの勢いでちがり、テーブルを回り込んで私の腕を掴もうとしました。 私はを翻し、彼のの届かない位置へと退しました。
私のその徹底した拒絶の仕に、健は凍りつきました。 もし私が泣いていたら、彼は抱きしめて宥めようとしたでしょう。 もし私が鳴り散らしていたら、彼は「おも落ち着けよ」と言い訳をねたでしょう。
けれど、目のにいる私は、泣きもせず、鳴りもせず、ただ荷物をまとめてちろうとしている。 交渉の余が、ミリも残されていない。 その絶対な絶望が、数、何つ自分で決断してこなかった健のぬるま湯のような世界を、根底から叩き割ったようでした。
「いやだ……由、てかないでくれ……。頼むから、考え直してくれよ……」
健の声が震え、掠れていきました。
「俺が悪かった。本当に俺が悪かったよ。おがそんなに追い詰められてたなんて、気づかなかったんだ……」
「気づかなかったんじゃないわ。気づかないふりをして、見ないふりをして、やり過ごしてきたのよ」
私はややかに告げました。
「もう遅いわ、健さん。契約も振り込んだ。
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来週、私はてく」
健はを抱え、そのに崩れ落ちるようにしゃがみ込みました。 彼の喉から、ヒュウヒュウとけない呼吸音が漏れていました。
彼が恐れていたのは、妻を失うしみだけではありませんでした。 由という防波堤を失った瞬、あの過干渉で傲な母親の全エネルギーが、今度はすべて自分に向けられるという恐怖。 そして、「妻に逃げられたけない男」として親戚や世に晒される屈辱。 彼が必に避けてきた「現実の摩擦」が、巨な津波となって自分に襲いかかってくることに、彼はようやく気づいたのです。
い沈黙が、リビングを支配しました。 計の秒針の音だけが、無質にカチ、カチと響いていました。
やがて、健がゆっくりと顔をげました。 その顔は蒼で、目には涙が浮かんでいました。
「……鍵を、変える」
途切れ途切れに、彼は言いました。
「え?」
「鍵を、変えるよ。母さんが持ってる鍵を使えないように、シリンダーごと取り替える。最の、暗証番号のやつにする。俺が……俺が、会社を休んで業者を配するから!」
健はいがるようにしてちがり、私にすがるような目を向けました。
「母さんには、もう度と鍵を渡さない。俺が母さんに言う。『もう勝に入ってくるな』って、俺のから言うから! だから……頼むから、その契約をキャンセルしてくれ。
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もう度だけ、チャンスをくれないか……」
私は、必に懇願する夫の顔を見つめました。 彼がので、母親の向に逆らおうとしたことなど、おそらく度もなかったはずです。 その男が、今、震えながら「鍵を変える」とにしている。
けれど、私のはきませんでした。 それは彼が成したからではなく、単に妻を失う恐怖に突きかされた、なパニックに過ぎないかもしれないからです。
「健さん」
私は静かに言いました。
「鍵を変えるかどうかは、あなたの問題よ。このをどう守るかは、あなたが決めること。私は約束なんてしないわ」
「由……」
「曜まで待つわ。あなたが本当に鍵を変えて、お義母さんを締めす覚悟があるのかどうか。それを見てから、この部をてくかどうか決める」
それが、私が彼に与えた、最初で最の猶予でした。
そして迎えたのが、あの曜でした。
健は本当に、自分ので鍵の交換業者を配しました。 万千円の事費用を自分のクレジットカードで支払い、曜の午にスマートロックの設置を完させました。 彼は作業が終わった直、しい暗証番号を震える指で設定し、私にメッセージを送ってきました。
『鍵、変えたよ。母さんには絶対に教えない』
その直でした。 義母がデパの牛肉をぶらげてやってきて、かないドアので狂乱し、健の会社へりの話をかけたのは。