"義母の合鍵が入らない" 第4話
い、聞き覚えのある義母の笑い声。 そして、それに応じる見らぬの女性の、慮のない品な相槌。
私の臓が、ドクンと嫌な音をてました。
鍵穴に自分の鍵を差し込み、静かに回しました。 カチャリと音がしてドアをけると、には見らぬ靴が並んでいました。 柄の刺繍が入ったスリッポンと、幅広のウォーキングシューズ。 そして、脱ぎ捨てられた義母の派なパンプス。
リビングの引き戸はけ放たれていました。
「――だからね、あの子ったら私がいないと何もできないのよ。お嫁さんも仕事にかまけてのことは抜きばかりだし、私がこうして面倒を見てあげないと、健がで」
義母の声でした。
「まあ、でも派なマンションじゃないの。駅からくて、当たりも良くて」
「息子の稼ぎがいいからね。私がしっかり育てたおかげよ。さあ、慮しないでべて。これ、あの子たちが結婚祝いで親戚からもらったっていういお皿なんだけど、使わないと勿体ないでしょう」
カチャカチャと、陶器の触れう音がしました。 それは、私の叔母が結婚祝いに贈ってくれた、欧製の限定のティーカップセットでした。 私は特別な記にしか使わず、切に器棚の奥にしまっていたものでした。
私は傘を濡れたまま玄関の隅にてかけ、音をてずにリビングへと歩み寄りました。
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引き戸の隙から見えた景に、私の界が真っになりました。
リビングのローテーブルを囲んで、義母と、彼女の所の友らしき代の女性が、が物顔で座ってお茶をすすっていました。 テーブルのには、私のティーカップに注がれた茶と、デパのケーキ。
けれど、私の息を止めたのは、その景ではありませんでした。
リビングの窓際、もっとも当たりが良く、私が休に腰掛けて本を読んだり、宅勤務のにパソコンをいていた、あのウォールナット材のさなライティングデスク。 結婚する、私が自分の初任からしずつ貯めたおで買い、実から切に持ってきた、私にとって唯の「自分の居所」だったあの机が、窓際から完全に消え失せていたのです。
机があった所には、見覚えのない、黒りする苦しい仏壇のような製の飾り棚が鎮座していました。 棚のには、くなった義父の遺と、古めかしい瓶、そして埃をかぶった陶器の置物が所狭しと並べられていました。
「……私の机は、どこですか」
静かに、けれどく響く声が、自分の喉から漏れました。
リビングの空気が、瞬で凍りつきました。 笑い声をげていたの女性が、ぎょっとして振り返りました。 義母はに持っていたティーカップをソーサーに戻し、驚いたように目を見張りましたが、次の瞬にはいつもの傲な笑みを浮かべました。
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「あら、由さん。かったのね。連絡もなしに帰ってくるなんて珍しいじゃない」
義母はちがりもせず、まるで自分のに帰ってきた娘を迎えるような態度で言いました。
「ちょうどいいわ。こちら、ご所の斎藤さんと田さん。私の自の息子のお嫁さんよって紹介してたところなの。お茶、もう杯淹れてもらえる?」
友のは、私のただならぬ気配を察したのか、引きつった笑みを浮かべてさく会釈をしました。 私はその会釈には応えず、もう度、同じトーンで繰り返しました。
「私の机は、どこへかしたんですか」
義母はわずかに眉をひそめ、げさにため息をつきました。
「なによ、いきなり入ってきて挨拶もなしに。机なら、あっちよ。ベランダにしておいたわ」
「……ベランダ?」
「そうよ。このリビング、当たりがいいのに、あんな暗いの机がドカンと置いてあったら運気が滞るでしょう? ちょうど実の物置を理してたら、お父さんの形見の飾り棚がてきたから、健のためにここに置くことにしたの。あの子、男なんだから、ちゃんと父親を祀らないと。あなたの机は、ほら、ベランダの隅にブルーシートをかけて置いてあるから。、入らないようにしてあるわよ」
が入らないように。 今が、どれほどの砂りか、この女は分かって言っているのでしょうか。